質問内容
購入を希望している住宅があります。建築の専門的なことはわからないため、専門家に住宅診断(ホームインスペクション)をしてもらおうと考え、不動産業者に話したところ、その不動産業者が住宅診断業者を紹介してくれると言います。
不動産業者に紹介して頂くと買主のための住宅診断(ホームインスペクション)としては不適当ではないかと心配していますが、大丈夫でしょうか?
回答内容
不動産会社から紹介された住宅診断業者へ依頼することには、2つの明確なリスクがあるためにお勧めできるものではありません。
紹介された住宅診断業者のお客様は不動産会社
住宅診断(ホームインスペクション)を行う会社のなかには、不動産業者やリフォーム業者などと提携してお客様を互いに、もしくは一方に紹介することがあります。住宅診断会社によっては、不動産業者などからの紹介に集客の多くを頼っていることもあり、そのような会社にとっては消費者よりも不動産業者などの方がお客様のようになってしまっています。
2003年より第三者として住宅診断(ホームインスペクション)を行っているアネストでは、不動産業者やリフォーム業者より「お客様を紹介します。ただ、何か問題が発見されても先にこちらに報告してほしい」「報告書を先にこちらへ提出してほしい」「結果によっては次から紹介できない」などという申し出を頂くことが何度もありました。もちろん、アネストではこれらの全てを断っているのですが、こういった業者側の要望を受け入れていくことでビジネスとしている会社もあります。
住宅診断会社によっては、別の会社や組織をつくって不動産業者などと提携していることもあります。また、工務店などで勤務している人が、休日に住宅診断会社でアルバイトしているということもあります。
いずれにしても、不動産業者やリフォーム業者、工務店などと深い関係をもっている住宅診断会社に依頼した場合、どうしても業者よりの診断結果を出してしまうというケースも実際にあります。「第三者として住宅診断(ホームインスペクション)を行うので、そのようなことは無い」と言っても、継続的に仕事を紹介してくれる紹介者(不動産業者等)の意向を意識したり、無意識に意向にそってしまったりする可能性は否定できません。
住宅診断(ホームインスペクション)をして現場で同じ症状を見ても、その診断者(ホームインスペクターや建築士)次第で指摘内容や表現の仕方がかわってきます。同じひび割れを見ても、完全なる第三者と「できればこのまま買ってもらったほうがいい」という意識が少なからずある人とでは、表現が変わる可能性があるということです。
専門知識のない買主は、その表現によって購入するかどうか等の意思決定が左右されやすいですから、上記のように「できればこのまま買ってもらったほうがいい」という意識があるかもしれない人や会社に依頼するよりも、不動産業者などと全く関係のない住宅診断会社へ依頼すべきでしょう。
紹介された住宅診断は調査項目が少なく、検査基準も緩い
また、新たに不動産会社が紹介する住宅診断(ホームインスペクション)で問題化してきたことは、調査項目の少なさと基準の緩さです。
そもそもの調査項目を減らすことで、買主が建物の不具合に気づきづらくなります。また、検査基準を緩くすることで、本来ならば早急に補修すべきことことでも大した問題ではないかのように誤解させられています。
紹介する不動産業者は、買った後に見つかった建物の不具合に責任をもってくれませんから、買主が自分で責任を負うことを考えて、紹介に頼らないようにしないといけません。
大きな資金を投じて購入するマイホームですから、不動産業者やその紹介という行為に対して強く不審に感じていなくても、念のために買主が選ぶ会社に依頼する方がよいのではないでしょうか。せっかく利用する住宅診断(ホームインスペクション)ですから、買主にとって安心できる立場の住宅診断会社を検討しましょう。