不動産業者間の物件の奪い合いと買主を焦らす裏事情

不動産業者の嘘で買主が損をする(レインズへの物件登録と不動産業者間の競争)」で書いた通り、不動産業者の営業活動のなかでは、売却物件の奪い合いがあります。前回までは、主に中古住宅をイメージして書いておりますが、新築住宅であっても不動産業者同士では物件の奪い合いとなっていることがあります。

たとえば、新築建売住宅を分譲する売主(不動産業者A)がその売却の仲介を不動産業者B・C・Dの3社に依頼したとします。この3社のいずれもが自社で買主を見つけて契約したいのは当然です。Bにその物件を案内して頂いた買主B-1が購入するかどうか検討している間にも、CとDが別の方を物件に案内することもよくあります。

Bの顧客B-1が前向きだとBが判断すれば、他社が先に売ってしまわないうちにB-1に購入申し込みを迫ります。「他の方が先に買ってしまいますよ」という常套セリフですが、これはなかなか効きます。買主を焦らすことで決断を迫るのですね。購入判断の参考のために住宅診断(ホームインスペクション)サービスをやっておりますが、「不動産業者に焦らされていまして、すぐに住宅診断に入ってください」と仰られる方は多いです。

本当に別の購入希望者がいる場合もあれば、いない場合もあります。他社が先に売ってしまうかどうかは、不動産業者Bにもわからないのですが、業者間の物件の奪い合いがあることをよくわかっているだけに、実は不動産業者も焦っていることがあります。そして、買主も焦らせているのです。

不動産は、立地・価格・建物プランなどの諸条件のいずれかが異なり、全く同じものがないだけに物件の奪い合いが生じ、このようなことになっているのです。新築であっても中古であっても、早く契約させたい不動産業者の思惑で取引が繰り返されている現実があります。

不動産業者の営業マンにしてみれば、1つ1つの契約お成否が自分自身の収入(給与)に深く関係するために、自分自身も焦り買主をも焦らせている事情があります。この点は次の「不動産営業マンの給与体系・歩合給と住宅購入者の悲しい関係」をご覧ください。

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