新築住宅を建てるためには、その敷地となる土地が必要です。その土地を相続や既に購入しているなどの理由により、所有しているのであればよいですが、所有していない場合は、土地探しから始めないといけませんね。
ここでは、これから土地探しをする人を対象として、土地探しのノウハウ、注意点、チェックポイントなどを紹介しています。
土地のチェックポイント(序章)
家づくりと言いましても、土地を所有されていない方であれば、実際には土地探しから始まりますね。
住まいはあくまで不動産でもあるわけですので、不動産の価値、資産価値というものを考えるときには、この土地探しは本当に重要なものになります。
不動産の資産価値は、建物に起因するものより土地に起因するものの方が大きいと考えて良いでしょう。土地の条件次第で、その不動産の資産価値が大きく左右されるものなのです。
土地の条件を考えるときには、どのような項目を見ていくべきでしょうか?
- 立地・環境
- 土地の形状
- 道路条件
- 各種規制(法や条例などの規制)
- その他
大きくは上記の5点にわけて考えると良いでしょう。それぞれが資産価値に影響を与えるものばかりですし、建てたい家を建築できるかどうかにも影響があるものです。
それでは、上記を1つずつ解説していきましょう。
土地のチェックポイント(立地・環境)
土地(敷地)を探すうえで、誰がも大事だと考えているのが立地ではないでしょうか。建物は改修や建て替えができますが、立地は変更できません。一度、購入すれば原則、条件変更ができないものである上に、資産価値にも大きく影響するものです。
実は、土地探しこそ最も慎重に進めなければならないものだと言っても過言ではないでしょう。
立地を検討する上では、
- 「慣れ親しんだ今の自宅の近くが良い」
- 「親の近所が良い」
- 「通勤に便利なところが良い」
などのように、施主(又は買主)の個人的な事情や都合によって考え方が変わるものがよく検討材料となりますね。もちろん、これは個々にとって大事なことなので、よく考えておいた方が良いでしょう。
ただ、それぞれ事情が異なることですので、ここでは「この方が良い」ということは特にございません。
そして、道路の条件や交通量、各種の規制など一般的に検討した方が良い項目もあります。どちらも大事なものですので、よく検討して判断したいところです。
例えば、角地であるかどうか、路地の奥かどうか、といったことも立地条件の1つです。日照・通風に影響があるのはもちろんですが、そのほかにも規制との関係で建物の大きさや形に影響する(制限がある)ことも非常に多いものです。
これらの一般的な項目については、以降で1つずつ解説していきますので、この機会にしっかり学んでください。
土地のチェックポイント(土地の形状)
土地の形状には、平面的な形状と立体的な形状の両方をチェックします。平面的な形状は、土地(敷地)を上から見下ろして(鳥瞰して)見える形状です。
多くの土地が四角形ですが、なかには三角形や三角形に近い形状もありますし、道路から通路を通った奥に土地が広がる路地状敷地というものもあります。旗竿敷地とも言われます。
基本的には、その土地の使い勝手や日照・通風の点で四角形の土地が好まれます。
三角形の土地や路地状敷地は、住宅のプランも制限されるので、敬遠されがちです。ただ、ニーズが少ないだけに価格が安くなっていることが一般的ですので、対象として検討するのも良いでしょう。
ちなみに、建物を建てるためには、その土地が道路に2メートル以上接している必要がありますので、安いからと言って単純に路地状敷地を選ぶわけにはいきません。
次に、立体的な形状についてです。
道路と土地の高さが同等であることが多いですが、道路より土地が高い位置にあることも多いです。たとえば、新興住宅地でよく見られる風景です。山を切り開いて土地を造成する際に、どうしてもそうなってしまうのです。
道路から玄関まで階段を上がることになるので、お年寄りには辛いこともあります。対策としてスロープを設置する方法もありますが、道路と土地(もしくは玄関)の高低差が大きいとスロープの距離が長くなりすぎてしまい、土地の面積を多く使用することになってしまいます。あまり現実的とは言えません。
逆に、土地が道路より低いこともあります。この場合に最も注意すべきは雨水です。雨水が土地内に流入してくるようでは、湿気の問題が生じますし、ひどい場合には床下浸水や床上浸水の可能性が高まってしまいます。
湿気は、当然ながらカビの問題を誘発しますし、シロアリも湿気のあるところを好みますので、注意が必要です。
本来であれば、敷地内から道路などへ排水しないといけませんので、対策を十分にとれるかよく検討してから購入判断した方が良いでしょう。
道路条件(1)道路の幅員
土地選びをする上で、かなり重要なチェックポイントと言えるのが「道路」です。ただ単純に、人や車などの通行の利便性だけを考えれば良いというものではありません。道路の条件が違えば、すぐ近所の同じような形状、面積の土地でも大きく資産価値が異なることもよくあるものです。
道路のチェックポイントの1つめが「幅員」です。つまり、道路の幅です。
目安は4メートルです。4メートル未満の道路に接する土地の場合は、新築する際に「セットバック」しなければなりません。「セットバック」とは、道路の中心から2メートルの位置までを道路として提供し、そこには新たに建物などを建てることができません。(このセットバックの距離の計算には例外もあり)
購入希望の土地に接する道路が4メートル未満であれば、上記のセットバックの可能性が高いことを意識しておきましょう。
その道路に接する土地のが全てセットバックを完了すると、4メートル幅の道路になるのですが、 該当する土地上の建物の全てが建て替えなどをするのには長い月日がかかります。
ですから、現状で4メートル以上の幅がある道路が理想です。
ちなみに、土地の価格を算出する際、一般的にはセットバックする部分の面積は計算外とします。建物の敷地として使えない土地ですから、その部分は無価値と考えるわけです。
ただ、道路は幅員だけでは判断できませんので、次の道路の種類もチェックしてください。
道路条件(2)道路の種類
道路には、各種法律に基づく種類があります。まずは、その種類を挙げてみます。
- 国道
- 都道府県道(県道・府道などと呼ぶ)
- 市町村道(市道・町道などと呼ぶ)
- 私道
これらの道路には、それぞれ道路の管理者というものがいます。国道であれば「国」が管理者ですし、市道であれば「市」が管理者です。
この道路の種類も幅員と同様に、土地の資産価値に影響するものです。
上記(1)~(3)に接した土地であれば、資産価値にマイナスではありません。これは、あくまで道路の種類だけで考える場合の話であって、例えば、国道沿いだけど、交通量が極端に多くて騒音や振動が激しい場合は、住宅地としてはマイナス条件となります。
この(1)~(3)に比べて、(4)の私道の場合は、資産価値にマイナスの影響を与えることがよくあります。
ただ、「私道」と一言で言いましても、この私道にも種類があり、その種類によって資産価値は異なるので注意が必要です。
私道は私有財産ですので、個人や法人が所有しています。では、この私道の種類を見ていきましょう。少し強引ですが、大きく3つにわけます。
- (A)位置指定道路など
- (B)2項道路
- (C)その他
私道には上記のようなものがあります。普段は意識せず通行している道路ですが、このように種類があるのです。
ここであまり細かな法律の話をしても理解し辛いと思いますので、細かなことは省略しますが、法律(建築基準法など)で定められているものです。
ここでは、あくまで資産価値に影響のある道路の種類を知ってもらえればいいと思いますので、上の(A)~(C)に分けて覚えてもらえればいいと思います。本当は、もっといろいろな種類に細分化されます。
最初の(A)にある「位置指定道路など」ですが、これは4メートル以上の幅員を有しており、ほぼ公道に近い資産価値を有しているとお考えください。もちろん、あくまで道路の種類としての話ですので、環境などのその他の条件によります。新興住宅地などで見られる開発道路もこれに該当します。
次に、(B)の「2項道路」道路ですが、これは4メートル未満の幅員で、建て替えの際にセットバックしなければなりません。セットバックは前回にお話しした通りです。
ここでの(A)と(B)の違いは、幅員が4メートルあるかどうかだとイメージしてください。但し、4メートルあれば全て大丈夫というわけではありませんので、あくまで目安としてください。
4メートル以上の幅員でその道路に接する土地上の建物を建て替えして良いものを(A)、4メートル未満ですが同様に建て替えしても良いのものを(B)と分けています。
一般的には、(B)よりも(A)の方が資産価値の点では有利です。
さらに、(C)なのですが、ここでは、国道・府道のような公道や(A)(B)以外であるが、建て替えの可能な道路だとお考えください。
「本当は建て替えできないのですが、例外的に認める」といったニュアンスのものがあります。それは、資産価値が他のものよりも劣る場合が多いです。
ちなみに、この他にも単なる通路もあります。道路として認められていないので、通路にしか接していない土地では建て替えができないため、資産価値がかなり低くなっています。
これらの道路の種類については、購入する直前の重要事項説明という場で不動産会社から説明を受けられますが、資産価値に不利であることまで明確に伝えて頂けないことも多いので、買主が自ら理解しておかないといけません。
道路条件(3)道路の現況
多くの買主が住宅を購入するときに、第1印象に大きく左右されます。第1印象だけで購入の是非が決まることも多いのではないでしょうか。
第1印象は建物だけではありません。実は道路にも言えることです。初めて土地や住宅を見学する際に土地(敷地)の接する道路にマイナスの印象を受ければ購入に否定的になることもあるものです。
将来の売却の際にも影響することでしょう。
もちろん、第1印象のためだけのチェックポイントでもありません。実用面でマイナス面があることもあるのです。
具体的なチェックポイントについてお話します。
まず、「通り抜け」です。その土地に接する道路が行き止まりになっていれば、資産価値としてマイナス効果を及ぼすことがあります。一般的には通り抜けできる不動産の方が価値が高いのです。
但し、行き止まりであれば、その道路に接する住宅の住人以外が通ることが少なく、交通量も極端に少ない為に、子供を住宅の前で遊ばせているときのことを考えると安全性が高いというメリットもあります。
不動産を見るとき、同じ条件の事柄がメリットにもデメリットにもなることが多くあります。どちらをとるかはあなた次第です。
次に、「歩道」のある道路です。これは、道路の見た目もよく利便性・安全性の面からも高く評価できます。ただ、同じ歩道のある道路であっても、対象土地の側に歩道があれば子供の飛び出しなどの際にやや安全性が高いですが、向側にあれば安全性という点ではあまり意味がありません。
塀や植栽が視界を遮ってしまい、車道を通行する車が子供の飛び出しに気づくのが遅れることもあるのです。
そして、「障害物」です。これは、道路全体を覆うような障害物のことではありません。その道路沿いのほかの住宅が、敷地外である道路に植木などの植物を置いているところがあります。ほかにも、駐車している車が敷地からはみ出ていることもありますし、自転車が敷地の外へ置いてあることもあります。?
これらは、視界を遮ることで利便性・安全性にもマイナスですし、多くの住宅が植物などを道路へ出している場合は資産価値にもマイナスです。なかには、道路の両側の住宅がこのようなことをしているケースもあります。
道路の現況(見た目)は、人によっては案外、見落とすこともあるようです。土地の見学に行った際に見るべきは、物件そのものだけではなく、道路も見ておくべきなのです。
土地探しの壁と建築条件付き土地
自宅の建て替えや親の土地など、建築用の土地を所有していない方であれば、家づくりの最初の段階で土地探しをしますね。その土地探しの際に大きな壁を感じることが多いです。
「更地に思い通りの家を建てたい」と考え、土地探しを始めます。
住宅展示場などで話したハウスメーカーを介して土地を探す方は多いですし、自ら不動産仲介業者にお願いすることもあるでしょう。
しかし、なかなか希望条件にあう土地が見つからない方が本当に多く、これを大きな壁と感じるのです。
特に従来からある街中では、更地もしくは古い建物付きの土地が一般に販売されていることは多くありません。
多くが中古住宅であるか、新築住宅です。
やっと「土地の売却物件を見つけた!」と思っても、多くの場合において、建築条件付きの土地ですね。
不動産会社が土地を仕入れて、建物を建てて販売する(分譲住宅・建売住宅)ことが多く、なかなか一般消費者に良い情報がまわってこないのです。
郊外の比較的大きな開発地では、土地の販売もありますが。
- よく大手ハウスメーカーが森を開発して、、、
- または地元の不動産会社が田や畑を開発して、、、
といったケースですね。
さて、前述した建築条件付き土地ですが、これは、どの工務店に建物の建築を依頼するか決められており、それが条件となっているものです。
多くの場合、土地の売主かそのグループ会社で建築することが条件となっております。つまり、希望する工務店やハウスメーカーが別にあったとしても、その土地で建ててもらうことはできないわけです。
建築条件付き土地は、建物に関して工務店を選ぶことはできないものの、住宅プランの自由度が高いことが多いですね。しかし、なかには建売住宅とあまり変わらないほどにいろいろな制限、条件が
設けられていることもあり、打合せを進めていく過程で「建売と一緒では、、、?」と疑問を感じる方も少なくありません。
これについては、契約前に諸条件をよく確認しておかなければなりませんね。
「建築条件を契約からはずしてほしい」と交渉される方もいらっしゃいます。不動産会社側は通常は応じませんが、土地の購入価格次第では応じることもあります。そういう事例を何度か見てきました。
不動産会社の多くが、土地の売買ではほとんど利益を出さず、建築代で利益を出そうと考えています。その建築代でねん出する粗利相当額を土地代に上乗せすることを条件に建築条件を外すことができる場合があるようです。
もちろん、買主にとっては割高な買い物となるのですが、希望をかなえるためと割り切っていらっしゃる方です。
今回は、土地探しのノウハウというわけではないですが、土地探しで直面する課題として知っておいて頂いた方が良いでしょう。