新築とリフォーム工事の見積りの裏事情

住宅の新築工事やリフォーム工事の見積り内容を理解し、不審点がないかチェックするためには、チェックポイントを把握するだけではなく、ハウスメーカーやリフォーム業者の事情や業界の一般的な常識について理解しておくと大変便利です。

利益の計上

見積書を見るときだけではなく、営業担当者などと交渉するときなどにも、見積りに関する予備知識として役立つことがありますから、このページを読んでおくとよいでしょう。まずは、見積書のどこかにあるはずの利益についてです。

利益は単価・諸経費に上乗せする

ハウスメーカーやリフォーム業者、建築会社から提示される見積書の金額には、当然のことながら会社の利益も含まれています。材料費、人件費(事務系も含む)、販売経費、実際にかかる諸費用、そして利益が見積書の総額には含まれているわけです。

しかし、会社の得る利益を利益という項目で表示することはまずありません。それを表示してしまっては、そこが値引きの対象とばかりに施主から交渉されるのは当然ですね。

それでは、会社の得る利益は見積書のどこに反映されているのでしょうか?

見積書の書き方には、会社や担当者による癖があることを何度がお伝えしておりますが、利益をどこに含めているかも会社等によって異なります。一般的には、各項目や諸経費に満遍なく上乗せするパターンです。

各工事・商品に利益を上乗せする方法

最も多いのが、各工事項目や商品代のほぼ全てに利益を上乗せして表示する方法です。下の見積書で説明しましょう。

見積書内の利益

上記の見積書は、キッチン・トイレなどの住宅用設備の商品代及び工事費が一緒に掲載されているページです。各項目に単価と金額が記載されておりますが、この金額に少しずつ利益を載せています。

見積書によっては、商品の代金とその施工費が別の項目になっていることもありますが、その場合は商品代金と施工費のそれぞれに利益を乗せて表示することが多いです(なかにはいずれか一方にのみ上乗せして表示する業者もあります)。

ちなみに、こういった方法で利益が計上されているという事実を解説しているのであれば、これがいけないという話ではありませんので誤解しないでください。

諸経費に利益を上乗せする方法

もう1つが、見積書の最初か最後に記載されていることの多い諸経費の欄に利益を上乗せして表示するケースです。

諸経費に含まれる利益

諸経費を少額にして、ここには利益をほとんど乗せない業者も少なくありません。工事や商品代金とは別に諸経費の金額が大きくなると交渉対象として狙われやすいという考えもあるからです。あらかじめ、ここからある程度の値引きに応じようと考えているケースもあるので、一概には判断できないところです。

そして、各工事や商品代金に利益を乗せつつ、諸経費にも乗せているということもよくあります。全体的に満遍なく乗せるわけですね。

見積書に関する業界の事情シリーズですが、次回は「住宅の新築とリフォーム工事の見積りの裏事情(仕入れ価格)」です。ハウスメーカー等が商品や材料をどれぐらいの価格で仕入れているのか気になる人も多いのではないでしょうか。

仕入れ価格

新築・リフォームの見積書(仕入れ価格)

見積書から見える建築業界の裏事情を知ることができれば、住宅の新築やリフォームも少しはわかりやすいものになるでしょう。今回は、建築会社等が設備や商品などをメーカーから仕入れるときの仕入れ価格に関するお話です。

建築会社・リフォーム会社のメーカーからの仕入れの裏事情

新築であってもリフォームであっても、建築会社やリフォーム業者などは、使用する材料や商品を各メーカーから仕入れるわけです。ボードや金物、クロス(壁紙)もそうですし、キッチンやユニットバス、トイレなどの設備機器もそうです。

建築会社やリフォーム業者が各商品をメーカーから仕入れる価格に興味のある人も多いでしょう。ここでは、仕入れの事情などについて説明します。

建築会社・リフォーム会社のメーカーからの仕入れ価格は安い

各商品等のメーカーは、オープン価格として一般に商品価格を表示していないものもありますが、多くのものはカタログやインターネットで定価を表示しているため、誰でも簡単に定価を確認することができます。

見積書によっては、以下の事例のように定価も記載していることがあります。

見積書に記載される定価

その定価と建築会社から提示された見積書の価格を比べるとわかりますが、見積書の表示価格の方が安いことが多いでしょう。見積書の金額にはその業者の利益も乗せられていることが一般的ですが、それでも定価よりも安いのです。

それだけメーカーからの仕入れ値は定価より安いということです(定価が高すぎるとも言えますが)。

メーカーや商品などによって異なりますが、実際の仕入れ値は定価の40~70%程度ということが多いです。業界人はよく「5掛け」とか「7掛け」などと会話しています。

一般個人が安くメーカーから仕入れることは困難

それならば、施主が自らメーカーから仕入れて現物を建築会社へ提供した方が安くなるのではないかと考えて、各商品のメーカーから購入しようとする人もいますが、現実的には難しいでしょう。メーカーは一般個人客に対しての販売をあまり積極的には行いませんので、問い合わせても定価でしか回答を得られないことが多いです。

建築会社がいくらで仕入れているか確認しようとしても、もちろん回答を得ることはできません。よって、どれぐらいの利益が乗せられているか知ることも難しいものです。

ショールームに行けば、メーカーから丁寧な商品説明を聞くことはできますが、直接仕入れるというのは難しく、卸値を知ることも無理なのです。

そんなことが簡単にできてしまっては、建築会社が商売をしづらくなりますし、建築会社からメーカーに対して不満が募ることでしょう。メーカーの立場としては、一般消費者よりも建築会社の反応が気になります。消費者は何度も何度も新築やリフォームしませんが、建築会社は大事な継続的な顧客だからです。

メーカーからは、定価の見積りを受け取ることになりますが、その際に「実際の価格は建築会社さんに確認してください」と口添えがあるでしょう。

同じメーカーの商品を進める建築会社の事情

建築会社などがメーカーを仕入れる価格は、前述の通り定価よりも非常に安い価格です。そして、その仕入れ価格は会社によって異なるものですから、少し話は複雑になります。

メーカーとしては、より多くの商品を買ってくれる建築会社を優遇する傾向にあるのは、想像できますね。大量仕入れが有利であるのはどこの世界でも同じです。それだけに、建築会社が施主に対して同じメーカーの商品を勧めることはよくあることです。

トイレもユニットバスもキッチンも全て同じメーカーのものを勧めたり、建具やタイルなどの仕上げ材まで同じメーカーのものを勧めたりすることがあります。1軒の住宅に使用される商品の多くが同じメーカーのものということは、大手メーカーのものを使用すればできることです。

同じメーカーの商品を勧める理由が仕入れ価格の安さにあると述べましたが、この安くなった分を施主に還元して工事費を安くするのであればよいのですが、単純に建築会社の利益としてしまうこともありますから、それでは施主は何もメリットがありません。

同じメーカーの商品を勧められたときには、どれぐらいの価格的なメリットがあるのかズバリ確認するとよいでしょう。

建築会社によっては、特定のメーカーの特約店になっている場合もあり、その場合はそのメーカーの商品の仕入れ値が安く、施主にも還元されている可能性はあります。ただ、いろいろなメーカーの商品を自由に選ぶ楽しさを損なうのはデメリットにもなりますね。

工事の見積りの裏事情(その他)

新築住宅とリフォームの見積書(その他)

新築やリフォームの工事を発注する人(施主)が、建築会社の立場や事情を理解しておくことで、不要なトラブルを減らし、ストレスを抱えずに済むことも多いです。

建築会社による見積り作成の苦労を理解する

新築やリフォーム工事の見積書を作成し提示する側から見れば、見積書の作成というのはなかなか難しいものです。提示した見積りを見てから、施主が工事内容の変更を希望するなどして、調整していき、最終的に契約する金額が固まるわけですが、その過程で建築会社が困ることもよくあります。

わかりやすくするために、シンプルな内装リフォーム工事を例えにします。2室の洋室の壁クロスの張替え工事の見積りを依頼されたとします。建築会社としてはきちんと価格の詳細を表示しようと心がけて、クロスを張り替える面積と1平米あたりの単価を表示し、合計金額を出したとします。

その見積書を見た施主が、予算オーバーだからと考えて1室のみを発注するので、1室分の面積で再見積もりを出してほしいと要望すると、どうなるでしょうか。

壁クロスの商品代は、多少、高級なものを指定したとしても大した金額ではありません。それよりも、人工代(職人の人件費)の方がはるかに高いのです。2室のところが1室になったからといって、作業時間は単純に半分にはなりませんので、面積が半分になったからといって価格を半分にすることはできないのです。

しかし、施主としては、単価が出ているのだから、面積×単価で計算して見積りしてほしいということになるのです。

見積りを作成する側としては、経験からこうなる可能性があるとわかっているため、作成するときに困っているのです。本来ならば、最初に見積りを提示する段階で、施工面積などの条件変更があれば、単価が変わるということをしっかり説明しておくべきでしょう。特に、面積が減れば単価が高くなることは強調しておいた方が互いのためです。

リフォーム工事はまとめて依頼する

これと少し関係する話としては、リフォーム工事を何度にもわけず、まとめて発注する方が安くなるというものがあります。たとえば、外壁の塗り替えをするときに、屋根の葺き替え工事も一緒に依頼するというものです。

外壁を塗装するためには、足場を設置しなければなりませんが、この費用が馬鹿になりません。外壁の塗装工事をした2年後に屋根の葺き替え工事をする人もいますが、2度も同じような足場代を負担してしまっています。

リフォームをするときには、今すぐの工事のことだけではなく、もう少し長いスパンで必要な工事を考慮し、計画的に実行することで全体のコストを抑えることもできます。

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