住宅診断(ホームインスペクション)の費用相場と格安・無料のリスク

住宅購入時や自宅の点検、リフォーム時などに活用されることの多い住宅診断(ホームインスペクション)ですが、どれくらいの費用がかかるのか疑問に感じている人も多いようです。そう何度も住宅診断(ホームインスペクション)を利用する機会はないですから、費用の相場がわからないのも無理はありません。

住宅診断(ホームインスペクション)を利用するときに参考になる費用(料金)の相場と注意すべき点を解説します。

一般的な住宅診断(ホームインスペクション)の調査料金

住宅診断(ホームインスペクション)の利用にかかる費用(料金)がどれくらいであるのか、調査範囲にわけて解説します。多くのホームインスペクション業者では、基本的サービスとオプションサービスで調査対象範囲をわけておりますため、それぞれの費用相場を示します。

基本的な住宅診断範囲の料金と調査範囲

住宅診断(ホームインスペクション)における基本的な調査範囲の費用は、50,000~70,000円前後が多いです。首都圏や近畿圏、東海圏などの都会とその他の地方では相場にも価格差があり、地方の方が安くなっています。

単純にHPに各業者が掲載している価格だけで比較するのは危険です。含まれる調査範囲やオプション、サービスに付随するもの等に関して相違が小さくないからです。

住宅診断(ホームインスペクション)における基本的な調査範囲とは、以下の通りです。但し、ホームインスペクション業者によって多少の相違はありますから、依頼時に確認するべきでしょう。

屋外

基礎・外壁・軒裏・ベランダは調査対象となります。但し、手の届かない高い位置は目視のみで調査します。

最上階の屋根は下から見上げて目視できる範囲ですから、詳細までは確認できませんし、屋根形状によっては全く確認できないこともあります。下階の屋根(例えば2階建ての場合の1階の屋根)は上階の窓やベランダから目視できる範囲を確認します。

雨樋も確認範囲が限られます。

門扉や塀、フェンスなどの外構は調査対象とする業者とそうでない業者にわかれます。調査対象外としていることが多いですが、塀の倒壊で被害を受けるケースもありうることから、調査してもらえる方がよいでしょう。

屋内

目視できる範囲は基本的に全て対象となります。各部屋・スペースの床・壁・天井の確認を行いますが、床や壁は目視だけではなく水平・垂直の計測まで行うことが一般的です。

キッチン・トイレ・バス・洗面台などの水回り設備については、水道を使用できる状況における調査ならば、排水テストまでします。建具・サッシは動作確認を行います。

床下・小屋裏(屋根裏)・天井裏

床下は点検口や床下収納庫から覗いて確認できる範囲のみを対象とし、屋根裏や天井裏も点検口から覗いて目視できる範囲のみを対象とすることが一般的です。

なかには、床下や屋根裏内部へ進入して奥まで調査することを基本サービスに含めていることが多いですが、一般的にはこれをオプションとして分けているものです。分けておかないと進入できる住宅とできない住宅で料金負担をわけることができなくなりますから、オプションとして分ける方が合理的だと言えます。

オプション調査の料金

オプションとして一般的に提供されているものは、床下や屋根裏内部に進入して調査を行う調査です。床下や屋根裏へ進入して調査をすると所要時間も準備するものも、体力的な負担も全く違ったものになりますから、オプション料金(追加料金)がかかるようにすることが一般的です。

床下や屋根裏へ進入するためには、その入り口(点検口など)が必要であり、さらに人が安全に移動できるだけのスペースが必要です。屋根裏では構造的に安全な足場となる箇所も必要です(天井板に体重をかけると壊れて落下してしまいます)。

オプション料金の相場は、床下で15,000~35,000円程度、屋根裏も別途で同様の費用がかかります。

報告書の質・量と費用

住宅診断(ホームインスペクション)を実施すれば、その診断結果を記述した報告書を依頼者へ提出するものですが、その費用は調査料金に含まれているものと別途費用としているものとがあります。よく見かけるのは、簡易な報告書は調査料金に含むものとしており、詳細な報告書は別途(5,000~15,000円程度)としているケースです。

業者のHPには報告書のサンプルを掲載していることが多いですから、そのサンプルでよく確認すべきでしょう。後に残すことになる報告書は非常に大事なものですから、この確認は時間をかけてでもしておくべき大事な作業です。

報告書の良し悪しのチェックポイントは、各部屋・スペース毎に診断結果を明確に記述する書式であるかどうかです。報告書の作成には時間と手間がかかるため、詳細な報告書としながらも簡素化されたものが多いので、各社のサンプルで比較するとよいでしょう。

住宅診断(ホームインスペクション)のコスト構造

ここまでに住宅診断(ホームインスペクション)の費用相場を説明してきましたが、このサービスを提供する事業者にはどのような費用(コスト)がかかっているのでしょうか。これを知ることで、適切な料金設定の重要さも理解できることでしょう。

人件費(現場における診断の作業費)

最大のコストは人件費です。住宅診断(ホームインスペクション)を提供する人は、建築技術者であるはずで、そのなかでも関連法規や経験を積むことのできる建築士が最も向いている職種です。この人件費を落とすことで提供価格を抑えることが可能になりますが、それは技術力や実績・経験の低下に最もつながりやすい部分でもあります。

最近はペーパー試験で取得できるインスペクション資格も増えておりますが、いずれも十分なものではありません。建築士資格を持った人であることは確認したいポイントです。建築士でも人件費の安すぎる人は実績・経験に劣る可能性が高い人ですから、要注意です。

報告書作成費

診断した担当者が報告書を作成するのにかかる人件費の部分と会社(事業の運営者等)が報告書チェックする人件費がかかります。細かなことを言えば、印刷費や送料もかかります。

詳細な報告書であれば、担当者の人件費で4,000~6,000円(もっとすることもある)、事業者のチェックや印刷費、送料だけで2,000~5,000円ほどかかります。

交通費・出張費

移動にかかる実費です。実際には移動時間も拘束時間ですから人件費の対象です。

調査機材

住宅診断(ホームインスペクション)に使用する機材はそれほど高額なものではありませんが、それでもいく塚の機材を購入しなければならず、現場では埃等で故障することも多いので、メンテナンスや買い替えの費用もばかになりません。

事務管理費用

お問合せ等の対応、スケジュール管理などの事務部門の間接費用もかかります。1~3人程度の規模で運営している小さな設計事務所の場合はここに費用がかからない分、安く提供できていることがあります。但し、会社としての実績・経験の積み上げが少ない点がデメリットになりますから、どちらが良いか検討すべき点です。

また、コスト負担が大きいのが診断結果等のデータベースの開発費とそのランニングコスト(保守費用等)です。ここに投資できる会社はごく少数ですが、調査に活用できるデータは重要です。

広告宣伝費用

HPの製作・運営費用や広告費用などですが、広告を出さない会社もあります。最近は営業担当者を配置して不動産会社へ紹介営業するケースもあります。但し、不動産会社と親密な関係作りをすることは、住宅診断(ホームインスペクション)で最も重要な第三者性を失うことになりますから、業者選びには注意しなければなりません。

床下のインスペクション

格安・無料の住宅診断(ホームインスペクション)

一般的な住宅診断(ホームインスペクション)の費用相場について解説してきましたが、ここで無料や格安の住宅診断(ホームインスペクション)についても触れておきます。

格安・無料の住宅診断(ホームインスペクション)もある

不動産会社やその関連会社、提携会社が、住宅診断(ホームインスペクション)を非常に安い料金で提供していることがあります。なかには、無料だとしていることもあります。

通常ならオプション調査を含めて100,000円前後はするものを低料金か無料で提供するとなれば、多くの人にとって魅力的に映るのも確かです。しかし、前述したようなコストがかかるはずのサービスをなぜ低料金で提供できるのかカラクリを知らなければいけません。

格安・無料のリスク

格安や無料を謳う住宅診断(ホームインスペクション)は、不動産会社やその関連会社、提携会社が提携しているものばかりです。つまり、その住宅を売りたい人たちが行っているものですから、利害関係の買主としてはその信憑性に疑問をもたねばなりません。

見つかった不具合が、大した問題でないかのように伝えることはよくあることです。これを隠蔽とまでは考えておらず、表現の違いで済ませてしまうこともあります。しかし、住宅購入時やリフォームの参考にするために住宅診断(ホームインスペクション)を利用する人にとって知りたいことは、専門性に基づいた客観的な意見やアドバイスではないでしょうか。

買主が住宅診断(ホームインスペクション)を利用したいと不動産業者へ申し出たとき、よく不動産業者の付き合いがある業者を紹介しようとすることがありますが、これも同じリスクがあります。不動産業者からの紹介で商売しているだけに、不動産業者の顔色を窺う仕事ぶりになってしまうことがあるからです。

格安・無料・紹介というキーワードには十分に注意すべきでしょう。大きな買い物をするときに利用するものですから、50,000~150,000円という金額は自分自身で投資しても良い金額ではないでしょうか。

 

○専門家に依頼するなら