築30年以上の中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)は必須
築年数がかなり経過した古い中古住宅の購入を検討している人の多くは、「こんなに古い家だけど、買っても大丈夫だろうか」と心配しているものです。購入しても長く持たないのではないかと心配する気持ちもわかります。
古いと言っても感じ方は人それぞれです。たとえば、築30年以上の住宅ならばいかがでしょうか。中古住宅を検討している人が「建物が古いので心配だ」と言っているケースでは、30年以上の場合が非常に多いですから、この年数が1つのラインになっているのでしょう。
心配や不安を取り除く有効な手段の1つとして、住宅診断(ホームインスペクション)という専門サービスがあります。建物の劣化状況や不具合の有無を可能な範囲で調査して、その結果次第で購入判断をするものです。
築30年以上の物件における住宅診断(ホームインスペクション)は今や必須となってきていますが、その理由や依頼する際の注意点を紹介します。
1.築30年以上なら住宅診断(ホームインスペクション)が必須の理由
住宅診断(ホームインスペクション)は、本来は築年数に関わらず有効なものですから、基本的には全ての物件に対して利用をおすすめします。しかし、築30年を超える中古住宅ではより一層、推奨されるものです。その理由をあげていきます。
1-1.劣化がひどい物件が多い
築30年以上の古い住宅ですから、当然ながらいろいろなところが劣化しています。劣化すること自体は当たり前のことですから、それだけをもって購入すべきではないという考えは早計ですね。個々の建物の状態をよく見極めて判断すべきことです。
ただ、古い建物ほど(築年数が経過しているものほど)劣化が進行しているのも事実です。そして、なかには築30年とは思えないほどに劣化が著しく進んでしまっている物件もありますから注意が必要です。
築30年以上の住宅では、築浅のものに比べると劣化がひどいことは多いという前提は受け入れておくべきでしょう。
1-2.売主の瑕疵担保責任が免責になっている
中古住宅を売買する際には、売主の瑕疵担保責任というものがあり、買主は購入した後に瑕疵を見つけたときには売主に補修を求めることができるのです。
しかし、この瑕疵担保責任は売主が不動産業者以外の場合においては必須ではありません。売主の責任を免責としてしまう契約内容も有効なのです。売主の瑕疵担保責任がある条件で取引するかどうかは、不動産業者へ早い段階で聞いておくとよいでしょう。
この瑕疵担保責任に関して買主が知っておきたいことは、古い住宅は瑕疵担保責任が免責になっているケースが多いという事実です。あくまでも売主と買主のお互いの交渉によって取り決めるべきことではありますが、古い住宅は免責とするのが不動産業界では一般的です。
業者や売主にもよりますが、築20年くらいを境として免責かどうか判断されていることが多いですから、築30年以上の中古住宅の売買の多くが免責としています。
免責の売買であれば、買主にとってはデメリットとなりますが、リスクを抑制するため、契約前に住宅診断(ホームインスペクション)をしておくことが望ましいと言えるのです。購入する前に瑕疵が見つかれば、その補修をしてもらうことや値引きしてもらうことを条件として交渉することもできますね。
1-3.既存住宅売買瑕疵保険に加入困難
売主の瑕疵担保責任が免責の物件である場合、買主はその代わりとして既存住宅売買瑕疵保険(以下、瑕疵保険)に加入することを希望する人もいます。売主が責任を負ってくれないなら、保険でリスクをカバーしようというのは良い考えですね。
しかし、この瑕疵保険には審査があり、そう簡単に保険に加入できるわけではありません。築30年以上の中古住宅ならば、合格率が低いためにあまり瑕疵保険の加入を期待できないものです。
以上のことから、買主はリスクを少しでも抑えるため、購入する前に住宅診断を依頼する必要性が高いのです。リスクの程度を考慮すれば、必須だと考えてもよいでしょう。
2.築30年以上の住宅診断(ホームインスペクション)の注意点
築30年以上の古い中古住宅に関して住宅診断(ホームインスペクション)を依頼する前に、確認しておくべきことを解説します。
2-1.床下と屋根裏の調査が重要
適切な住宅診断の結果を導き出すためには、床下や屋根裏を確認することが重要です。他の箇所に問題がなくても床下や屋根裏で異常が見つかることは多いからです。
しかし、築年数が古い家ならば、床下・屋根裏に入るための点検口がないこともありますから、事前に確認が必要です。点検口が無いならば、できれば開口してもらってでも調査した方がよいです。
壁や天井のクロス、床のフローリングなどに問題があって、構造躯体にリスクが無いならば、購入してもよいですね。リスクがあるならば、購入を中止するのも1つの判断です。表面的な劣化状況よりも、普段は見えない構造躯体の確認をしたいものです。
2-2.リフォーム済み物件に騙されるな
築30年以上の住宅でも、リフォームしたばかりの物件ならば、見た目の問題もなく大丈夫だと安心している人が多いです。不動産業者が前の所有者から買い取った後にリフォームして再販している物件も多いですが、こういった物件については見た目が非常に良いものが多いです。
購入してから自分でリフォームしなくてもよいのは、資金的にも魅力的に思える人も少なくないでしょう。
しかし、リフォーム済み物件には大きな問題があります。それは、リフォームによって問題視される症状が一時的に隠ぺいされてもわかりづらいということです。
リフォームした業者は、隠ぺいを目的としていないことも多いですが、それでも結果的に隠ぺいされてしまっては買主が適切な判断をできないものです。買主が中古住宅を見学する際は、見た目の綺麗さに騙されないように意識しておく音がとても重要なのです。
2-3.見た目の古さだけで敬遠しなくてよい
リフォーム済みで見た目が綺麗な物件に注意しなければならないと述べましたが、逆に言えば、リフォームをしていなくて古いまま、見た目がよくない住宅だからといって敬遠する必要がないことも理解しておきたいところです。
壁や床、天井、キッチン、浴室などの見た目が劣化したり汚れたりしていると、どうしても多くの住宅購入検討者は敬遠したくなるものです。しかし、表面的な劣化や汚れだけならば、簡単に修繕して綺麗にすることができます。もちろん、修繕費用はかかりますが。
重視すべきは、修繕に多大なコストがかかる問題がないか、重大な瑕疵がないかといった点ですから、見た目だけで判断する必要はないということです。
2-4.建物価値がなくてもインスペクションは必要
不動産業者から、「もう古くて建物の価値はほとんどないので、ホームインスペクションしても意味がない」と説明された人から相談を受けたことが何度もあります。
その住宅を購入してすぐに取り壊して建て替えるのであれば必要ないですが、購入してからも何年も住みたい人にとっては、資産価値どうか、建物価値が0円だといった問題は無関係です。住み続ける間、安心して暮らすことができるかどうか、想定外の補修費用に大きな予算が必要にならないかといった心配があるのですから、価値や価格に関係なく、建物の状態を把握しておくべきです。
ホームインスペクション(住宅診断)は建物の価値に関係なく、住み続けるために利用するものだということを理解しておきましょう。
ここで書いたように、築30年以上の中古住宅では、ホームインスペクション(住宅診断)を利用した方がよいものです。不動産業者の売りたい故に話す説明内容に左右されず、買主が自分で判断して利用を検討した方がよいでしょう。