建売住宅の売主の言い訳「当社の仕様」への注意点
新築の建売住宅を購入したときによくある問題があります。それは、買主が売主に対して建物の仕様に関して質問をしたときに、売主から回答される次のフレーズです。
「それは、当社の仕様です」
仕様(しよう)とは、対象のものに対して要求する形状や構造、機能、使用材料などです。つまり、建売住宅の売主が言っていることは、「それは売主である当社がそういう性能、機能、形状の住宅を建てて販売しているのであって、施工ミスや不具合ではない」ということです。
たとえば、床がフローリングであるか絨毯であるか、外壁がサイディング貼りであるかモルタル塗りであるかといったことも仕様です。買主がサイディングを希望していたけれど、売主の仕様でモルタル塗りということであれば、買主の希望と異なっていても仕方ないことです。もちろん、図面や仕様書などでサイディングと明記されているのであれば話は別です。
現実には、床や外壁などの仕様は、購入する前に現地で見学したときやパンフレットなどで簡単に確認できることですから、あまり問題となることはありません。しかし、買主が理解しづらいこと(建築的に専門的なこと等)や完成前の建売住宅を購入したがために現地で確認できなかったことであれば、問題となることがあります。他にも図面や仕様書に明記されていないことでも問題となることがあります。
<事例1:洗面台と壁の隙間>
問題となる事例は、ホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)をしたときによく確認されます。たとえば、洗面台と壁の隙間です。
上の写真では右側の壁と洗面台の境は白いコーキングがされています(見づらいですが)。しかし、コーキングなどもなく洗面台と壁の間に隙間がある建売物件を見ることがあります。欠陥というわけではありませんが、生活していくうえで心配されることとして、誇りやごみ、水が隙間に入ってしまうことが考えられます。掃除しづらい隙間ですし、水が入ってしまうとカビの心配もあります。
コーキングで隙間を埋めてもらうことで、これを防ごうと考えてコーキングの施工を依頼すると、「それは当社の仕様だ」「これが仕様なので有料での対応となる」と売主が回答することがあるのです。この程度のことであれば、大した手間もコストもかからないため買主が要望すれば対応してもらえることも多いですが、当社の仕様を盾に拒否されることもあるのです。
また、隙間が大きすぎる場合、コーキングで埋めるにしてもコーキングの施工範囲が大きすぎて見た目が悪いというケースもあります。できる限り隙間が生じないように施工時に工夫してもらいたいものですが、残念ながら見た目のよくない施工となっていることがあります。
これもまた、「当社の仕様です」と言い訳と思える回答をする建売住宅の売主があります。これが仕様ならば、その会社が提供している建売住宅はどの物件もそうなっていることになってしまいますが、実際にはそうではなく対応を面倒だと考えて言い訳にこのフレーズを使っていることも多いです。
<事例2:ユニットバス点検口から確認できる防火上の問題>
この「それが当社の仕様です」という言い訳は、いろいろなケースで乱発されることがありますが、ひどい事例としては次のようなことがありました。これもホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)で確認された実例です。
防火上の規制の問題で、壁に石膏ボードを使用しなければならない(他の対応方法もある)住宅であったのですが、ユニットバスの点検口から点検口の内部を確認したところ、必要な箇所に石膏ボードが無いことがありました(この施工ミスはよくあるので注意が必要)。
これは違反になってしまうことですから指摘したところ、売主の担当者が「これは当社の仕様なので、対応できない」と堂々と回答したのです。このフレーズを伝家の宝刀とでも考えているようです。
この担当者は自分が何を言っているのかも理解できていないのでしょう。違反となる施工内容を会社が標準仕様としている、当社はそういう会社だと無茶苦茶な主張をしている状況です。ありえない回答ですね。
これと同様の事例は非常に多く、違反だということを認識していない建築業界人はまだまだ多いです。違反となることを説明してあげても、理解しようとしない人も多いのが残念です。
建売住宅を購入するときや購入した後、何か気づいた点を売主に質問して、「それは当社の仕様です」と回答されたときには要注意です。まずは疑ってみることも必要です。
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