中古住宅を買うときの値引き交渉のコツと注意点(1)
いろいろな物件を見学した結果、買いたいと思える中古住宅に出会ったとき、売主が提示している販売価格をそのまま受け入れて、値引き交渉をせずに購入しますか?それとも値引き交渉したいと考えますか?
誰もが少しでも安く住宅を購入したいと考えているものですが、値引き交渉をしては売主や仲介している不動産業者に失礼ではないだろうかと心配したり、そもそもどのようにして値下げしてもらえばよいかわからなかったり、本当に値下げしてもらえるのかわからなかったりしますよね。
値引き交渉をすること自体が失礼にあたると考えている人がいることに驚きますが、中古住宅の売買において価格に関する交渉をするのは何もおかしなことでも、失礼なことでもありません。気を遣いすぎることなく値引き交渉をしてみましょう。
中古住宅の値引き交渉を成功させるための6つのコツ
今、まさに中古住宅の値引き交渉をしようとする人にとっては、値引きを成功させるためコツをすぐに教えてほしいでしょう。そう簡単なものでもないのですが、ここでは先に中古住宅の値引き交渉を成功させるためのコツをお伝えします。
しかし、その後に書いていることこそ大事なことですから、コツだけを読んで失敗しないようにしてください。
<中古住宅の値引き交渉を成功させるための6つのコツ>
- 本気で買う気を見せる
- 購入価格以外で自分の購入条件が良いことをアピールする
- いくらまでなら購入してもよいか決めておく
- 購入意思のある価格の上限を本当の金額より低く伝える
- 不動産業者の立場や関係を把握する
- 値引き交渉に関する予備知識を頭に入れておく
6つのコツをあげましたが、1つずつ説明しますね。
1.本気で買う気を見せる
いきなり最も大事なコツと言えるものの登場です。売主の気持ちで考えれば理解できることですが、本気で買おうとしていない人に対して、値下げした価格を提示したり、値引き交渉に応じたりするのは心理的にも嫌なものです。自分の不動産の価値を落とすような感覚にもなります。
その住宅を本気で買おうとしているということをしっかりと売主へ伝えなければなりません。「売買金額さえ合意できれば、必ず買いますよ」という確かな意思表示を必要ということです。仲介する不動産業者にその旨を明確に伝えるようにしましょう。
2.購入価格以外で自分の購入条件が良いことをアピールする
複数の購入検討者がいる場合、売主にとっても不動産仲介業者にとっても購入条件の良い人に優先的に売りたいと考えます。その条件の1つが価格ですから、値引き交渉はマイナス材料です。1つのマイナス材料があるならば、その他のプラス材料を出すしかありません。
たとえば、買主に住宅ローン審査で不合格になる怖れがないこと(または可能性が低いこと)をアピールすることです。勤務先が大企業であることや年収が高いこと、勤続年数が長いことなどは住宅ローン審査において大事な条件ですから、該当すればプラス材料になります。
特に効果的なのは、中古住宅購入に充てる自己資金が多いことです。自己資金が多ければ融資額が少なく、審査に合格しやすくなるからです。この分野でいえば、融資を受けず全額をキャッシュで支払うという人は最も有効な条件ですから、不動産仲介業者や売主も値引き交渉に応じやすくなるでしょう。
3.いくらまでなら購入してもよいか決めておく
値引き交渉をするうえで、買主は交渉の全体戦術を考えおかなければなりません。ただ、闇雲に「値下げして!」というだけでは応じてもらいづらいものです。戦術を考えるうえで、最初にいくらまでなら本当にその物件を買うか決めておくことです。
たとえば、3,500万円で販売されている中古住宅に対して、3,400万円以下になるなら買うのか、3,200万円にならないと買わないのか、もしくは値引き交渉に失敗して3,500万円でも買うのかどうかです。これを決めておくことで、交渉の過程で自分を見失うことも回避しやすくなります。
4.購入意思のある価格の上限を本当の金額より低く伝える
値引き交渉の戦術の2つ目として、最初から購入する上限金額を仲介する不動産業者に伝えてはならないということです。たとえば、上の事例で3,400万円以下になるなら買う(3,400万円超なら買わない)と決めていても、最初から不動産業者にそのようには伝えずに3,300万円以下なら買うと伝えるということです。
営業マンも買主の顔色や反応を確認しながら、本音はもっと上の金額ではないか?などと考えているものですが、最初から正直に出るのは交渉で不利になりやすいものです。
5.不動産業者の立場や関係を把握する
中古住宅を買うといっても、売主から直接買うのか、仲介する不動産業者がいるのかによって関係性は異なります。仲介も売主と買主のそれぞれに別の不動産業者がいることも多いですが、不動産業者の立場によって交渉のし易さは異なってくることがあります。
仲介する不動産業者が売主と買主で別々である場合、他にも購入を希望している人がいるかどうか正確に把握することができません。売主と買主の不動産仲介業者が同一である場合、さきほどの関係よりは他の購入希望者の存在を把握しやすいです。
しかし、売主が複数の不動産業者に売却を依頼している場合(一般媒介という)は売主と直接に媒介契約している不動産業者でも他の業者が購入検討者を抱えているかどうか、非常にわかりづらいです。
売主から売却を依頼されている不動産業者が1社のみであり、その不動産業者から買主が物件を案内してもらっている場合、他の不動産業者が案内する購入検討者よりも優先されることがあります。優先と言っても売主が優先するのではなく、不動産業者が勝手に優先していることが多いです。
それは、売主からも買主からも仲介手数料を得たいからです。この点については、不動産業界の仲介の仕組みを理解しておく必要があるため、「不動産業界の裏話・業界事情」は読んでおいた方がよいです。
6.値引き交渉に関する予備知識を頭に入れておく
中古住宅の値引き交渉を成功させるには、小手先のテクニックやコツだけでは難しいものです。的確な状況判断をしていくためにも、不動産の仲介という仕組みについて正しく理解し、且つ値引きに関係することをできる限り把握しておく必要があるのです。
値引き交渉の成否は、中古住宅売買の予備知識をどれだけ持っているかということです。以降では、この予備知識(交渉の成否に影響すること・不動産業者の事情など)について解説します。
中古住宅の値引き交渉の成功・失敗に影響すること
買主が値引き交渉をするうえで大事なコツとして、「値引き交渉に関する予備知識を頭に入れておく」ことをあげました。その1つ目として、まずは、中古住宅購入時の値引き交渉の結果に影響する可能性がある事項を把握しなければなりません。
<中古住宅の値引き交渉の成功・失敗に影響する可能性がある事項>
- 他の購入希望者がいるか
- 売主が売り急いでいるか
- 売り出し開始からの経過期間
- その時点の販売価格の設定時期
- 買主の買いたい気持ちの強さ
- 販売価格と相場のずれ
- 中古住宅の売買市場の動向
上記のいずれもが値引き交渉に影響しやすいことばかりですが、1つずつ見ていきましょう。
1.他の購入希望者がいるか
他にその物件を購入したいと考えている人がいれば、買い手側に競争が生じますから売主に有利になりますね。ただ、他の希望者も値引き交渉をすることは多いですから、他の購入希望者がいるからといって必ずしも値引きしてもらえないというわけでもありません。
2.売主が売り急いでいるか
売主が売却を急いでいる場合、買主に有利となります。買い替えをしようとしている売主で、自宅をいつまでに売らなくてはならないと決まっていることがあります。期限が近づけば近づくほど、値下げに応じやすくなります。
また、買い替えの場合、不動産業者と条件付きの買い取り契約を結んでいる場合があります。期日までに誰かに買ってもらえなければ、3,000万円で不動産業者が買い取るといった内容の契約です。
この場合、販売価格が3,500万円であったとしても、3,000万円~3,500万円の間で値下げに応じる可能性がありますね。不動産業者に買い取ってもらう金額より高いならマシだと考えるからです。
3.売り出し開始からの経過期間
その物件を売却開始してから長い間、売れていなければ、売主が値引きに応じる可能性が高くなります。どれぐらいの期間が経過すればよいかは個々の事情によって異なるため、よく検討しなければなりません。
例えば、都会で取引件数が多いエリアであれば、半年以上も売れなければ売主も弱気になるでしょう。一方で、地方で不動産の取引が多くないエリアであれば、半年ぐらいでは何とも思わない人もいるでしょう。
4.その時点の販売価格の設定時期
買主が物件を見学して気に入った時点では、3,500万円で売りに出ていたとしても、それが元々の販売価格よりも値下げしているということはよくあることです。売主がその物件の価格を値下げしてすぐのタイミングであれば、そこから更に値下げするのを嫌がる傾向にあります。
一度、値下げした直後は値引きしてもらいづらいのです。
「値下げしたのだから、しばらく待てば他に買い手が現れるのではないか?」と考えることがよくあるからです。しばらく販売価格が変わっていないのか、値下げしたばかりなのかは不動産業者に聞くか広告の表示をチェックしていて変化の有無を確認したいところです。
5.買主の買いたい気持ちの強さ
不動産の値引き交渉に限らず、多くのことで同じことが言えますが、買主が買いたいという気持ちが強いほど値下げ交渉には不利なものとなります。一方で、本気で買う姿勢を見せないと交渉にのってももらえないことがあり、難しいところです。
不動産業者に「どうしても買いたいのだな」と感づかれたら、もうすでにその中古住宅の値引き交渉には負けているかもしれません。
6.販売価格と相場のずれ
販売価格(売り出し価格)が、同地域の似たような条件の物件の価格や相場から大きくずれておれば、買主に有利に働きやすいです。とはいえ、販売価格が高すぎるのであって、値引きと言っても適正な価格になるよう交渉するだけですから、喜ばしいこともでありませんね。
7.中古住宅の売買市場の動向
不動産市場の動向も大事な要素です。中古住宅が市場でだぶついているか、売り物件数が不足しているかは売主・買主のそれぞれの事情に影響があります。市場がだぶついていて、売り物件が多いときには値下げ圧力が働きやすいですが、逆に売り物件が少ないときは買主側に競争が生じますね。
購入する時期によって、売り出されている物件数は異なりますから、この点もチェックしておくとよいでしょう。チェックする方法は簡単で、売却物件を掲載している不動産ポータルサイトで希望するエリアの掲載物件数を普段から見ておくことです。
これによって、その地域における相場感も養われますから、一石二鳥ですね。
中古住宅を買うときの値引き交渉のコツと注意点は、これだけではありません。続きは「中古住宅を買うときの値引き交渉のコツと注意点(2)」をご覧ください。
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