中古住宅を買うときの値引き交渉のコツと注意点(2)

誰もが気になる値引き交渉のコツ等について解説する「中古住宅を買うときの値引き交渉のコツと注意点(1)」の続きです。前回は、「中古住宅の値引き交渉を成功させるための6つのコツ」や「中古住宅の値引き交渉の成功・失敗に影響すること」についてお伝えしました。

今回は、不動産業者の事情やよくある不動産業者の交渉テクニックについてお伝えします。

仲介する不動産業者の気持ち・考え・事情

少し極端な表現ですが、住宅の流通市場は不動産仲介業者が仕切っていると思ってください。新築住宅ならば、売主もプロであることが多いですし、売主の方が立場の強いことも多いですが、中古住宅では売主も正しい情報や知識を持たず、買主ともども不動産仲介業者に操られています。

仲介する不動産業者の気持ち・考え・事情

不動産仲介業者がタクトを振っているのが、中古住宅の市場であり現実なのです。不動産仲介業者は契約が成立しないと報酬を得られない(売上が上がらない)ため、何よりも契約成立を優先させるものです。そんな不動産業者が考えていることや事情も理解しておきましょう。

<不動産仲介業者の考えや事情>

  • 他の不動産業者が売ってしまうのではないか
  • 売主に値引きを依頼するのが格好悪い(特に売主が不動産会社の場合)
  • 売主にも価格交渉をして、値引きの巾をもっている

上記についてもう少し詳しく見ていきましょう。

1.他の不動産業者が売ってしまうのではないか

1つの物件を複数の不動産業者で扱っているため、他の不動産業者が先に売ってしまうのではないだろうかと心配するのが多くの不動産業者です。これは取引の仕組みから、そうなるものですから仕方ないですね。

買主がようやく購入の決心を固めて購入申し込みをしても、直前に他の業者を介して別の人から購入申し込みが入っていたということは日常茶飯事です。

売主から専任媒介か専属専任媒介の契約を頂いている不動産業者でもない限りは、この心配はよくあることです。

ちなみに、売主から専任媒介か専属専任媒介の契約を頂いている不動産業者である場合、購入する可能性のある買主を抱えていれば、他の業者から購入申し込みが入ったとしても、自社の顧客(買主)を優先しようとすることも多いです。売主からも買主からも仲介手数料をもらえるからです。

しかも、別の不動産業者が案内した購入希望者の購入希望額の方が、自社の案内した顧客の提示額より高くても、売主に正確に事実を報告せずに自社の顧客を優先することもあります。売主にすれば損することになりますが、不動産業者は自社の利益の最大化を狙うあまり、このようなことが業界内では行われることがあるのです。

価格交渉という意味では、売主から専任媒介か専属専任媒介の契約を頂いている不動産業者に問い合わせて物件を案内してもらう方が有利になることがありそうですね。

2.売主に値引きを依頼するのが格好悪い(特に売主が不動産会社の場合)

営業マンにもよることですが、売主に対して買主の希望する値引き交渉をそのまま取り次ぐことに抵抗を持っている人もいます。特に、不動産会社が売主である場合にそのように考えている営業マンがいます(中古住宅でも売主が不動産会社ということはある)。

3.売主にも価格交渉をして、値引きの巾をもっている

これも知っておいた方がよいことですが、多くの不動産業者は売主との間で、「いくらまでなら価格を下げられるか?」と聞いているものです。特に市場相場よりも高い価格で販売を依頼する売主に対しては、この確認をするものです。

不動産会社としても広告費をかけて営業するうえで、売主が無茶を言うだけならば、あまり相手したくないということもあるのです。当初の売り出し価格が高くても、状況を見ながら価格を下げてもらえるかどうか、売却依頼を受ける過程で確認するのは一般的なことです。

売主が値引きできる巾をある程度、知っているはずですから、買主としてはその巾を最大限、引き出したいところですね。

但し、この値引きの巾は売主から売却依頼を受けている不動産業者の話であって、その他の業者にはなかなかわからないものです。

不動産業者の買主に対する価格交渉のテクニック事例

中古住宅の値引き交渉を考えるうえで、最後のお話しとして不動産業者の交渉事例をお伝えします。こういったことが必ずあるというものではないですが、実際にありうることだと認識しておいてください。

不動産業者の買主に対する価格交渉のテクニック事例

  • 他の買主がいるように思わせる
  • 売主には値下げできない事情があると買主へ思わせる
  • 値引き交渉をしたら売主の機嫌を損ねて元の価格でも売ってもらえないと言う

それでは、上記を1つずつ見ていきましょう。

1.他の買主がいるように思わせる

これは常套手段ですね。実際には、他にその住宅の購入希望者や検討者がいないにも関わらず、いるように思わせて買主を買う気にさせる(購入の決断を迫る)手法です。単に購入の決断を迫る効果だけではなく、競争意識が買主側に生じるため、「値下げ交渉しては買えなくなる」と思わせる効果があります。

「他にも検討している方がいるので、早めに決断して頂いた方がいいですよ」といった類のフレーズです。

多くの人が、それは事実ではないかもしれないと考えるのですが、それでも本当かどうかは確かめられないため、効果を生むことが多いです。簡単に使える手法であることもあり、毎日、どこかで営業マンがこのセリフを言っていることでしょう。

最近、住宅の売買を題材にしたTVドラマがあり、そのなかでも主役の女優さん(営業担当)からこの手の話がありました。購入を決断しない検討者(Aさん)の耳に入るように、別の人(Bさん)に電話して購入の話を進めるというシーンです。Aさんを焦らせようとしたものですね。

そのシーンでは、Aさんが「その手にはのらない」とはっきり言ったのですが、その営業担当のすごいところは、そこからでした。実際にBさんを物件見学に呼んで、BさんがAさんの前で購入すると言い出したのです。Aさんは、焦って自分たちが先だと言って購入を決断しました。

でも、このBさんは仕込みだったようです。無茶苦茶しますね。これは極端な話ですが、これに近いことはあり得ない話でもないのが不動産業界です。

2.売主には値下げできない事情があると買主へ思わせる

買主の値下げ交渉を拒否するために、売主が交渉に応じられない理由を作ることがあります。よくあるのは、資金不足を理由にすることです。例えば、売主が買い替えに伴って自宅を売却するものの、次の住宅の購入資金や融資額の上限の兼ね合いで、これ以上は値下げできないといった話です。

自宅の売却で得た資金で次の家を買うから、値下げしたら売却も購入もできないということなるのですが、買い替え自体が本当であっても、資金がぎりぎりだとの話は作り話ということが多いです。

他にも売却額で住宅ローンの残債を支払って、抵当権を抹消するので、ローン残高より安くはできないということもありました。実際には自己資金を出せば抵当権は抹消できるのですが。

3.値引き交渉をしたら売主の機嫌を損ねて元の価格でも売ってもらえないと言う

値引き交渉をするだけで売主が機嫌を損ねるというのもおかしな話ですが、実際にあった事例です。確かに気難しい人はいますが、交渉を始めるだけで機嫌を損ねるのは無理がありますね。但し、交渉する価格が極端に安すぎるとあり得ない話でもないですから、相場を考慮して交渉するようにしましょう。

不動産業者は簡単に交渉できる方を説得する

中古住宅の値引き交渉に関することで、最後に知っておくべきことをご紹介します。不動産業者は、売主と買主を天秤にかけて簡単に説得しやすい方を説得しようと試みる傾向にあるということです。

不動産業者は簡単に交渉できる方を説得する

話をシンプルでわかりやすくするため、売主と買主の間には不動産仲介業者が1社だけの取引をイメージしてみましょう。

不動産業者は売買が成立しなければ、報酬を得られないため、何とかして契約したいと考えています。売主は少しでも高く売りたいですし、買主は少しでも安く買いたいです。当然のことですね。

このとき、不動産業者が「売主は頭の回転も速いし、交渉のために何か話を作っても信用しないだろうなぁ。買主の方は簡単に要求をのんでくれそうだなぁ」と感じていたら、それだけに買主には不利です。不動産業者は買主の方が説得しやすいので、買主をなんとかしようと考えるからです。

「売主は気難しい人だからなぁ」と感じているだけでも影響することでしょう。

あなたが買主であるならば、簡単に言うことを聞いてくれそうだと思われると値引き交渉にも不利だということです。値引きに関わらず、多くの条件交渉(引渡日をいつにするか、瑕疵担保責任をどうするか等)において不利になります。

なかには、条件を交渉する余地もなく、不動産業者が一方的に売主の希望を押し付けてくることもあるので、これには注意してほしいです。

中古住宅の価格交渉をテーマに書きましたが、新築住宅でも活かせる話が多いので参考にしてください。

 

執筆者:専門家

 

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