住宅購入の諸経費で不動産業者がよく誤魔化すもの

新築でも中古でも住宅を購入する際には様々な諸経費が必要です。初めての住宅購入では、どのような費用がどれくらいの金額になるのかイメージしづらいのではないでしょうか。不動産業者のなかには、そこに付け込んで不当に諸経費で儲けようとするものがいるので注意しなければなりません。

不動産業者がよく誤魔化そうとする諸経費にはいくつかのパターンがあるので、それをここで紹介します。ここで話すことが全てではないものの、リスクは下がりますから、不動産会社に購入費用で騙されないようにするため読んでおきましょう。

1.住宅ローンの斡旋手数料(代行手数料)

不動産業者が誤魔化そうとする諸経費で最も多いのは、住宅ローンの斡旋手数料です。

住宅ローンの斡旋手数料

多くの人が住宅購入に際しては金融機関から住宅購入資金の融資を受けますが、それが住宅ローンです。住宅ローンの融資申し込み手続きは、買主が自ら全ての処理をすることもあれば、手続きの一部を不動産業者が代行することもあります。この代行に係る手数料として請求される金銭が、住宅ローンの斡旋手数料です。

斡旋手数料という名称ではなく、住宅ローン代行料や代行手数料など、似たような名称で請求されることも多いので、同じことだと考えてください。但し、金融機関に支払う事務手数料は別の費用ですから混同しないでおきましょう。

諸経費の項目のなかに似たような名称の項目があれば、不動産業者に次のように聞いてみるとよいでしょう。

「この費用は、何のためにどこに支払うものですか?」

これに対して、

「融資手続きの代行をするのに必要な費用で、当社に支払って頂くものです」

と回答されれば、住宅ローンの斡旋手数料(代行手数料)だと考えてよいでしょう。

住宅ローンの斡旋手数料は、融資申し込み手続き等の一部を代行することへの対価として請求されているのですが、実際には融資申込書等の書類を準備して、買主が記名・押印したものが金融機関に提出するだけのことなので、それほどコストがかかるようなものではありません。

この簡単でちょっとした作業のために、数十万円もの請求をされている人もいるので要注意です。これまでに見てきたこの種の費用の金額は5~10万円程度であることが多いですが、30万円以上もの高額請求になっているケースを見て驚いたことが何度かあります。

少額ならよいのかといえば、それも実は微妙です(本当はダメなことも多いです)。

例えば、不動産業者の仲介で住宅を購入する場合、その不動産業者には仲介手数料を支払いますが、この手数料には上限が決められています。詳細は省きますが、その仲介手数料の上限は「売買金額×3%+6万円」で計算できます。不動産業者は仲介業務に際して、基本的には名目如何を問わずこの上限を超える金銭を受けることはできないのですが、別途で住宅ローンの斡旋手数料を請求していることがよくあるのです。

大手不動産業者では、こういう請求はしておりませんが、中小の不動産業者では今でもよくあることなので、決済のときに知らずに支払っていないか確認してください。

建築条件付き土地売買の建物の仲介手数料

2.建築条件付き土地売買の建物の仲介手数料

不動産業者が誤魔化す諸経費にもいろいろありますが、比較的、金額被害が大きなものとしては建築条件付き土地売買の際に、どさくさに紛れて建物価格に対する仲介手数料まで請求するケースがあります。

これだけを聞いてもわかりづらいですね。以下で説明します。

仲介してくれた不動産業者へ支払う仲介手数料は、売買金額に対する割合で計算することになっています。その計算式は前述した「売買金額×3%+6万円」です。例えば、売買金額が3,000万円なら96万円となります(税別)。

あなたが建築条件付き土地を買おうとしたとき、その土地の売買価格が1,500万円なら仲介手数料の上限額は51万円(税別)となるわけですね。そして、土地の売買契約とは別に建物の請負契約を締結するのですが、その建物の建築工事費がいくらであろうとも、建物を仲介されたわけではないので仲介手数料はかからないのです。

しかし、一部の不動産業者では、この建物価格(正確には建築費)まで仲介手数料の対象として計算して不当請求していることがあります。それも、よく見かけることです。

建築条件付き土地を購入するときは、土地の売買金額にのみ仲介手数料が発生するのであって、建物の建築費には発生しないことを覚えておきましょう。

但し、不動産業者も巧妙に対応していることが少なくありません。合法的な請求だと見せかけるために、建築条件付き土地の売買と建物の請負工事という取引だったはずが、いつの間にか土地・建物を一体とした売買契約にすり替えられていることがよくあります。

土地と建物と一体として売買契約、つまり建売住宅を購入するのと同じ取引内容としているわけですが、こうすることで土地だけではなく建物価格にまで仲介手数料を請求できるようになるのです。

広告では建築条件付き土地と記載しておきながら、またはそう口頭で説明を受けていたにも関わらず、途中から建売住宅のような契約になりそうになれば、警戒すべきサインです。仮に建物価格が1,500万円なら最大で51万円(税別)を過大請求されることになるのですから。

登記費用の上乗せ請求

3.登記費用の上乗せ請求

不動産業者が誤魔化す諸経費のなかでもわかりづらいものの1つが、何らかの費用に上乗せされているものです。たとえば、登記費用です。

登記費用は所有権移転や抵当権設定(住宅ローンの担保権の設定)のために必要となるので、登録免許税という税金と司法書士へ支払う報酬や交通費などの経費のことを言うことが一般的です。これらは必要な経費ですね。

しかし、一部の不動産業者は司法書士が登録免許税などと一緒に請求する登記費用の上に不動産業者の不当な利益を上乗せ請求していることがあります。その金額が小さなものであれば、請求金額が怪しいと感じることもなく支払っていることがあります。

通常は決済のときか、その前の段階で司法書士の名義で見積書や請求書が発行され、その書面に項目名と金額が記載されているので、こういった行為を不動産業者がすることは少ないのですが、司法書士から受領した見積書等を買主へ渡さず、諸費用の明細一覧のなかに上乗せした金額だけを書いて請求しているケースがありました。

買主としては、きちんと司法書士の名義で発行される見積書・請求書を確認してから支払うようにしてください。これで多くのことを防ぐことができるでしょう。

追加工事・オプション工事の割り増し請求

4.追加工事・オプション工事の割り増し請求

新築住宅を購入するとき、追加工事やオプション工事を売買契約とは別に発注するケースもあります。建売住宅によっては、いろいろな設備等がオプション扱いになっているので、後から追加発注する人は意外と多いものです。

こういった追加工事やオプション工事は、その物件の売買契約を締結してから見積りをとると割高な金額になることがあります。なぜなら、物件の購入自体は確定しているので売主側が強気なのです。オプション等を追加発注するのであれば、売買契約を締結する前に見積りをとっておくようにしないと誤魔化されることがあるので注意しましょう。

5.その他、よくわからない諸経費に要注意

ここに挙げた諸経費の話は一例です。よくあること、そして金額が大きなことを紹介していますが、他にもいろいろな事例が確認されています。

買主が取るべき対策は、売買契約の前に不動産業者から諸経費の一覧(概算金額でもよい)を書面で提示してもらい、契約前にその内容をチェックすることです。

見慣れない項目が多いかもしれませんが、その1つ1つについて、「この費用は何のために、どこに支払うものですか?」と聞いてください。疑うなんて失礼だ!ということはありません。知らないことを聞くのは当然のことですね。

また、一覧に上がっている項目の名称をインターネットで検索して調べてみると、怪しい物であれば確認できることが多いです。素人でも簡単にとれる有効な対策なのでぜひ実行してみましょう。