住宅を高く売るためのコツと注意点 ~物件見学編(2)~
前回の「住宅を高く売るためのコツと注意点 ~物件見学編(1)~」では、第1印象が大事だということをお伝えしました。今回は、実際に住宅購入検討者が見学するときの注意点などを解説します。
買主が物件見学するときの対応の仕方
見学(内見)がある前の準備(清掃・魅了する準備)ができれば、次は実際に購入検討者が見学にきたときの対応についてコツと注意点を見ておきましょう。
売主は、ここで住宅購入検討者の気持ちを考えてあげなくてはいけません。
買主にとって一番興味があるのは、その住宅そのものですが、「売主さんはどんな人だろう」と考えている人もいます。売主が居住しながら売却する場合、物件見学時には売主と買主が会うこともありますが、そのとき、買主は売主を観察する気がなくとも視界に入ったときの印象は残るものです。
そこで、以降であげる点には十分に気を配りましょう。
丁寧で上品な対応
人と人の対応の基本とも言えますが、丁寧な対応をしてください。最初に挨拶したときに、「遠慮せずゆっくり見てください」とひとこと付け加えるのもよいでしょう。また、できれば上品に振る舞っておいた方が好印象を持ってもらえることが多いです。
丁寧で上品な対応は、売主自身をアピールするためではありません。「こんな方なら、大事に家を使ってきたのだろうな」と思って頂きやすいからです。売主が大事にしている家と大事にしていない家では印象が異なるのもわかりますね。この部分が購入検討者の意思決定に影響を与えることもありますから、注意しましょう。
余計なことは話さない
物件見学時は、挨拶時以外には売主と購入検討者が直接に会話する機会はそれほどありません。購入検討者が何か質問するとしても、不動産会社を介することが多いですし、その方がトラブル防止のためにもよいでしょう。
なかには、購入検討者に対して自宅のアピールをしようといろいろ説明する人もいますが、それをこころよく思わない人もいますから、よく不動産会社と打合せしておいた方がよいでしょう。つい余計なことを話してしまってマイナス印象を与えることのないようにしたいものです。
下手に出すぎない
丁寧に接することと下手に出ることは違いますね。なかなか売れないからといって下手に出ると、「売れないということはもっと値下げするということか?」「売れない理由があるのか?」などと考える人もいます。
価格交渉で相手が強気に出やすくなることもありますから、下手ではなく丁寧に対応しましょう。
不動産会社の意見をよく聞く
初めて住宅を売却する人にとっては、見学前の準備や見学時の対応などについてわからないことも多いでしょう。多くの売却物件を取り扱ってきた不動産会社、営業マンであれば、どういった点に注意すべきかよいアドバイスをもらえることもあります。
面倒だからといってスルーせず、1つ1つの提案やアドバイスを真剣に検討する気持ちをもってください。営業マンが不動産のプロとは言えないぐらい知識不足の場合もありますが、意外とそんな人でも売るためにすべきことはわかっていることがあります。
住宅購入時の住宅診断(ホームインスペクション)への対応を疎かにしない
住宅を購入するときには、購入検討者が契約前に第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を利用することも多いです。
とくに中古住宅では住宅診断(ホームインスペクション)を利用する人が年々増えており、売買契約前の重要事項説明の際に不動産会社が売主・買主へ住宅診断(ホームインスペクション)の利用有無を確認することを義務付ける法案が2016年に通りました(おそらく2017年に施行される)。
住宅診断(ホームインスペクション)は、建物の劣化状態などを専門家が調査して報告するものですが、この診断結果を購入判断やリフォームする範囲の検討などに活用されています。
買主による住宅診断(ホームインスペクション)を素直に受け入れる
多くの場合、住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するのは買主です。購入判断や購入した後のリフォームの必要性、範囲を知るためですから、買主が依頼するのです。
購入前ですから、住宅診断(ホームインスペクション)を買主が利用するためには売主の了承が必要となりますが、なかには売主が拒否することがあります。拒否してしまうと、買主の印象が悪くなり、かつ「建物に何か問題があるからだろうか」と疑問をもち、購入してもらえないことも多いです。
積極的に、住宅診断(ホームインスペクション)を受け入れることが重要です。注意点としては、不動産会社が勝手に買主の希望を断ってしまうことがあるため、売却の媒介契約を締結するときに「買主の希望があれば、住宅診断してもらっても構いません」と先に伝えておくとよいでしょう。
不動産会社は成功報酬ですから、住宅診断(ホームインスペクション)の利用で問題点が見つかって買ってもらえなくなることを嫌って、売主に説明もせずに「売主が拒否しています」と言ってしまうひどい人までいます。また、売主に対して「拒否した方がいい」とアドバイスしてしまうこともあります。
これは、強引にでも契約にこぎつけて仲介手数料を得たいと考えるから出てくる発想であり、真剣に売主や買主のことを考えていないからです。
売主の瑕疵担保責任のリスク減少というメリット
実は、住宅診断(ホームインスペクション)をすることは売主にも大きなメリットがあります。多くの中古住宅の売買では、売主に瑕疵担保責任というものがあります。売却した住宅に瑕疵が見つかったときに、買主に対して補修等を負担する責任を負うというものです。
補修すべき範囲が多大なものであれば、売主は責任を負いきれないこともあります。そして、これに該当する瑕疵に売主が気づかずに暮らしてきていることも多いですから、売却後に買主からの瑕疵担保責任の追及に困る人もいます。
そうなったとき、不動産会社は仲介手数料を得た後、つまり自社の目的達成後ですから、まともに相談にも乗ってくれないこともあります。売買契約前の住宅診断(ホームインスペクション)を拒否するようアドバイスしておきながら、問題発覚後にきちんと対応しないということはよくあることです。
売買する前に住宅診断(ホームインスペクション)で瑕疵が見つかっておれば、買主はその瑕疵を許容して購入するわけで、瑕疵の存在を知っていて購入したならば、売主に対して瑕疵担保責任を求めることはできないため、売主のリスクが減ることになります。
もちろん、その瑕疵の内容によっては購入中止という判断になることもありますが、後から発覚して責任を追及される場合とどちらがよいか考えましょう。買主によっては、その補修にかかる費用分の値引き交渉などをするケースも考えられますが、売却後に補修するよりも話はスムーズではないでしょうか。
売主が住宅診断(ホームインスペクション)を実施しておくこともある
住宅診断(ホームインスペクション)は、買主にとって必要であり、購入しやすくなる(売主から見れば売りやすくなる)もので、かつ売主のメリットもあるものですから、それならば売主が自ら住宅診断(ホームインスペクション)をして購入検討者に診断結果を見てもらうことで、より有利に売れるのではないかと考える人もいます。
これは間違いではありませんが、全く効果を発揮しないことも多いです。住宅診断(ホームインスペクション)に全く興味のない買主もいますし、興味があって利用したい人であっても、売主側が提示する診断結果を信用しない人も多いからです。
住宅の売主と買主は利害が対立する関係にありますから、売主が第三者の結果だとして住宅診断(ホームインスペクション)の報告書を見せても、懐疑的に見ることはあります。そして、現実に売主にとって都合のよい診断結果をまとめてしまう業者もあることから、余計に信頼性に問題が生じつつあります。
買主が自分で選んだ会社で住宅診断(ホームインスペクション)をする方が安心できることもあることを十分に理解したうえで、売主が実施しておくかどうか検討するとよいでしょう。
不動産会社による住宅診断(ホームインスペクション)の注意点
住宅診断(ホームインスペクション)を仲介する不動産会社が実施することもあります。住宅診断(ホームインスペクション)を無償もしくは格安で実施すると提案することもありますが、営業力に問題があったり、信頼性の低い住宅診断会社を使ったりすることもありますから、注意しましょう。
また、売主が実施する住宅診断(ホームインスペクション)と一緒で、買主がその診断結果を信頼できないと判断することも多いです。不動産会社は売れないと仲介手数料が入らないため、買主から見れば、簡単には信用できないからです。
売主や不動産会社が住宅診断(ホームインスペクション)を実施していても、同じ住宅に対して買主が自分で選んだ会社で診断することもありますが、このとき、売主側が実施した内容に何か見落とし等があれば、信頼関係は完全に壊れてしまいます。
実際に、不動産会社が診断を依頼したケースでこの事例があり、当然ながら買主は購入を中止しましたし、問題を隠蔽しようとした可能性のある不動産会社に対して売主も信頼できなくなりますね。
住宅を高く売るためには、多少の努力や気遣い、注意が必要なことがわかりましたか?愛着あるご自宅をよい条件で売却できるといいですね。
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