中古住宅の売買契約書のチェックポイント
購入する住宅が決まれば、購入申し込みをしてから売買契約の締結を行いますが、購入申し込みのところまできてから、「売買契約書を見てその内容を理解できるだろうか?」「買主に不利な内容になっていないだろうか?」「誰かに見てもらった方がいいのではないか」と不安になる人は多いです。
今、これを読んでいるあなただけではありません。
不動産は普段から利用しているものの、売買する機会は多くないですし、契約書を見る機会が多い人は限られています。そのうえ、購入する金額も普段の買い物と違って大きいですから不安になって当たり前といっても過言ではありません。
今回は、不動産取引のなかでも中古住宅を購入する人を対象に、売買契約書のチェックポイントを解説します。契約する前に読んでおき、安心して取引できるようにしましょう。
1.売買契約書も重要事項説明書も大事
売買契約を締結するときに目にする書面は、売買契約書だけではありません。いろいろな書面が提示されますが、そのなかの1つに重要事項説明書というものがあります。この書面は、対象物件や取引内容に関する重要なことが記載されたもので、取引の当事者へその重要なことを説明するためのものです。
その名からも想像できると思いますが、重要事項説明書は売買契約書と同じように非常に大事な書面です。
中古住宅に限りませんが、不動産を購入するのであれば、この2つの書面は必ず契約日よりも前に受領して熟読しておく必要があります。買主側から何も要求しなければ、契約の当日になって不動産会社から初めて見せてもらうことが多いですが、契約の席で見ただけで理解できるようなものではないので、「前もって」提示してもらうようにしましょう。
要求すれば、不動産会社からその書面を出してもらえるはずです。
2. 中古住宅の売買契約書のチェックポイント
それでは、売買契約書のチェックポイントを紹介します。ただし、ここに挙げたことだけを見ておけば安心だと言っているわけではありません。よくトラブルになる点に絞って紹介しているものですから、前述したように必ず自分で全てを読んでおくべきです。
- 金額の確認(売買代金・手付金・残代金)
- 住宅ローン特約(融資利用の特約)
- 売主の瑕疵担保責任
- 引渡し日と残代金の支払い日
- 特記欄・備考欄・その他欄
- 付帯設備表で取引対象を要チェック
ここで紹介する大事なチェックポイントは以上の項目ですが、これらについて以下で少し詳しく説明しておきます。
2-1.金額の確認(売買代金・手付金・残代金)
売買契約書には、必ず売買代金や手付金、そして最後に支払う残代金の金額が記載されています。これらの金額が事前に打ち合わせた金額と相違ないかチェックしましょう。特に、手付金が話と違ったという相談を受けることがあるので、注意して確認してください。
2-2.住宅ローン特約(融資利用の特約)
家を買う人の多くは住宅ローンを利用しますが、残念ながら金融機関の審査で承認を得られず、購入できないときがあります。売買契約をした後に融資を受けられずに購入できなくなってしまうと、その契約はどうなるのか?となりますね。
そこで、住宅ローンを利用して購入する取引の場合は、売買契約のなかで融資利用の特約を付けることになります。俗にいう住宅ローン特約です。
契約後の審査で金融機関から融資の承認を得られないときには、この特約によって契約を解除し、支払い済みの手付金を返金してもらい、契約をなかったものにするというものです。
融資を受けるにも関わらず、この特約が付いていないということはまずないでしょう。しかし、その特約の内容で問題となることは非常に多いです。チェックポイントは、融資の承認期日と融資利用の特約による契約解除期日の関係です。
この特約では、融資の承認を得られないときに自動的に契約を解除するものと、買主が契約解除を申し出ることによって契約解除するものがあります。前者の場合は問題になることは少ないですが、後者の場合に融資の承認期日と融資利用の特約による契約解除期日の関係で問題が起こることがあります。
融資の承認期日
金融機関からこの期日までに承認を得なければならない日
融資利用の特約による契約解除期日
この期日までに買主が契約解除を申し出なければならない日
これが2つの期日の意味ですが、この2つの期日が同日に設定されている契約をよく見かけます。
仮に、両方ともに期日が7月1日だとして考えてください。銀行から7月1日になって融資が不承認だと通知された場合、その日のうちに買主は契約解除を申し出なければなりません。しかし、買主が仕事などで忙しくて、すぐに連絡等の手続きをできない状況だとすればどうでしょうか?
契約解除の申し出をしなければならない期日を過ぎてしまい、特約を利用できないとなれば大問題ですね。
また、買主によっては融資される金額の減額を銀行から通知された場合に、その不足分を身内から援助してもらうケースもありますが、そういった話し合いなどをする時間もありません。
そこで、この2つの期日は同じ日にせず、間に数日~1週間程度あけておく必要があるのです。
2-3.売主の瑕疵担保責任
中古住宅を購入すると、購入後に建物の不具合が発見されることがあります。雨漏りであったりシロアリ被害であったり、いろいろなことが起こりえます。
買主にとっては、それらがリスクになるため、そのリスクをできる限り抑えられるようにと住宅診断(ホームインスペクション)が利用されるようになったのですが、この住宅診断でも全ての問題を発見できるとは限りません。見られない箇所や専門家が見てもわかりづらい症状があるからです。
そこで買主の立場では、売主の瑕疵担保責任が重要になります。
売主の瑕疵担保責任とは、売買した家に隠れた瑕疵があったとき、売主が買主に対して負う責任のことです。売主は、瑕疵を補修対応したり、損害賠償責任を負ったりします。
中古住宅では、売主が不動産会社か否かで責任を負う期間等が異なります。
売主が不動産会社である場合、瑕疵担保責任の期間は引渡しから2年以上としなければなりません。これより短い期間としても無効です。売主が不動産会社ではない場合、期間は引渡しから3ヵ月であることが最も多いです。ただ、契約によっては1カ月や2カ月ということもありますし、売主の瑕疵担保責任を免責としていることもあります。
免責とする取引は、対象物件の建物の築年数が古い場合です。築30年以上の住宅の売買では免責にしていることが多く、築20年以上でも免責にしている取引は少なくありません。しかし、築20年未満であるにも関わらず、免責となっているようならば瑕疵担保責任を負って頂くよう交渉するとよいでしょう。
2-4.引渡し日と残代金の支払い日
売買契約を締結する時点で、契約書のなかに引渡し日と残代金の支払日を記載するので、まずは明記されているか確認してください。そして、その日程があなたの希望に合っているか、事前に打ち合わせた通りであるか確認してください。
一般的な中古住宅の売買では、引渡しと残代金の支払いは同日に行います。売買代金の全てを支払うことで所有権を買主へ移転し、引き渡すという契約内容にしているはずです。ただ、一部の取引では引渡し日を後日にして支払いを先にすることもあるので、注意が必要です。
2-5.特記欄・備考欄・その他欄
売買契約書や重要事項説明書のフォーマットには、特記欄・備考欄・その他欄などのように文章を追記できるスペースが設けられています。取引によっては、こういった自由記入スペースにいろいろなことを記載しており、その記載事項を買主が承諾することになっていることが多いです。
記載されていることの多くは、当然のことが多いのですが、なかには大事なことでそれまで買主が説明を受けていなかったことが含まれていることもあるので注意して確認したいポイントです。長い文章が書かれていると読み疲れするかもしれませんが、知らないうちに承諾して購入したことにならないためにも、必ず読んでおきましょう。
2-6.付帯設備表で取引対象を要チェック
売買契約書とは別に付帯設備表という書面があることも多いです。この書面には、様々な設備が記載されており、それぞれが売買の対象になるのか、故障していないか、といったことが記載されています。たとえば、食洗器やコンロ、照明器具のことなどが記載されています。
買主がこれも売主が残していく設備だと当然のように思っていたものが、実は売主が撤去して次の家へもっていくということもあるので、この書面で確認しておく必要があります。
この記事の中でとりあげたチェックポイントは最低ラインのものです。これさえ確認しておけばよいというものではないので、きちんと契約書類を受け取ったら全てを熟読し、不明点などは事前に質問しておくようにしてください。