住宅ローンは金利差より返済期間差が大事かも

「住宅ローンといえども負債に違いないので、老後に持ち越さないよう完済したい!」皆さんそう思うことですが、実際なかなか上手く行かないこともあります。

最近50代から同じようなご相談が増えてきています。

定年前に住宅ローン完済を目指していたのに、無頓着で繰り上げ返済にあまり取り組めず、60歳を過ぎても返済を引きずりそうというものです。退職金・再雇用賃金・年金受給額が思っていたより金額が少ないため、どうしたものかと不安になるケースです。

もし退職金で住宅ローンを繰り上げ返済したとしても、その後の生活資金が不足する恐れが出てきたりします。

住宅ローンを組む際、一般的に適用される金利を重視しがちですが、「返済期間を何年にするか?」も大事だと思っています。

たとえば、住宅販売業者から出てくる資金計画を見ると、完済年齢が80歳以上にならない限り、ほとんど35年で住宅ローンを組むような内容になっています。

業者には2つの意図があるように思えます。

  1. 目先の負担を出来るだけ軽く見せたい
  2. 住宅ローンの審査が通るようにしたい(返済期間が長いほど毎月の返済額が少なくなるので審査での収入基準を満たしやすくなります)

いずれにしても、せっかくの商談をスムーズに進めたいため、そのような提案になってしまうのでしょう。しかし、住宅ローン完済までの支払総額を少なくすることにおいて、短い期間で組んだ方が有利になります。

返済期間が短い住宅ローンとの比較事例

たとえば、借入額 3,000万円、ボーナス払いなし、元利均等返済で試算して比較してみましょう。

35年返済の場合 長期固定金利1.0%

毎月返済額=84,685円 → 年間返済額=1,016,220円 → 総返済額=約3,557万円

<参考> 長期固定金利1.1%(金利0.1%高いの場合)
毎月返済額=86,091円 → 年間返済額=1,033,092円 → 総返済額=約3,616万円

30年返済の場合 長期固定金利1.0%

毎月返済額=96,491円 → 年間返済額=1,157,892円 → 総返済額=約3,474万円

25年返済の場合 長期固定金利1.0%

毎月返済額=113,061円 → 年間返済額=1,356,732円 → 総返済額=約3,392万円

上記の場合、返済期間が同じで金利差0.1%で約59万円差。金利が同じで返済期間を5年短くすると約83万円差(35年返済vs30年返済)、さらに10年短くすると約165万円差(35年返済vs25年返済)。これぐらい総返済額が違ってきます。

今よりも金利水準が高かった頃はもっと差がつきました。

低金利でも返済が長期にわたると、総返済額で結構開きが出ることをおわかり頂けたと思います。

元利均等返済の場合、返済期間が短いほど1回の返済に占める元金部分が多くなりますので、元金残高が減るペースが速くなり、余計な利息を支払わなくて済みます。逆に長期になればなるほど、元金残高は少しずつしか減りませんから、当然掛かる利息も多くなってしまいます。

住宅ローンの返済期間を素直に35年と受けて組んでしまうと、完済先延ばしの「のんびり家計」になり、そこに浸って行くかもしれません。

『購入後の家計で支障なく返済できる額』がわかると適切な返済期間を割り出せます。そのためにもライフプランを立ててみることをお勧めいたします。

 

<執筆者>
・執筆者:山下修一
・所属会社:アズ・ユア・プランナー
・主な資格:ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)

<執筆者のプロフィール>
ライフプランからの住宅資金計画を提唱する実務家ファイナンシャル・プランナー。住宅ローンや保険の見直し、家計改善、資産形成など長期総合的にアドバイスを行っている。

 

山下修一

 

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