長期優良住宅を購入後の所有者の義務と注意点

住宅購入の流れのなかで長期優良住宅という言葉を聞いた人も多いでしょう。長期優良住宅の購入・建築を考えている人や、既に長期優良住宅を所有して居住している人がしっておくべき基礎知識や所有者の義務、注意点などについて解説しています。

自治体から長期優良住宅の維持保全などの定期点検や報告について通知が届くと、適切な対応方法がわからず困る人も多いです。そういった人もここで必要な知識を得てください。

 

長期優良住宅のメリット・デメリット

長期優良住宅を購入した後のことをメーンに解説していきますが、まずはその前にこの住宅のメリットやデメリットなどについても説明しておきます。

 

長期優良住宅とは?

そもそも長期優良住宅とは何かご存知でしょうか。長期優良住宅とは、住宅を長期間、良好な状態で使用し続けるために必要な基準を設けて、この基準に適合したもので申請手続きを経た住宅を長期優良住宅として認定しているものです。

耐震性やバリアフリー、リフォームのし易さといった基準もありますが、実は取得後の維持・保全に関する部分の計画と実行も重視されている点が特徴的です。

 

長期優良住宅のメリット

メリットとしては、金銭面の優遇(住宅ローン控除、登録免許税、不動産取得税、固定資産税に関する優遇)があります。他にも、将来的な資産価値の維持・向上の点でプラス効果も期待されています。

 

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅のデメリットとしては、申請の手間やコストなどがあげられます。不動産会社や建築会社によっては、買主等が希望しても対応しないこともありますので、交渉の手間が生じることもあります。そして、取得した後の手間やコスト負担もデメリットと言えるでしょう。

長期優良住宅に関するメリットやデメリット、基準などについては、「長期優良住宅の解説とメリット・デメリット・注意点」でもう少し詳しく解説していますので、こちらを参照してください。

 

長期優良住宅を取得した人(所有者)の義務等

今回のコラムのメーンテーマは、長期優良住宅を取得した後のことです。所有者が知っておくべきことなどを解説していきます。

 

長期優良住宅建築等計画と建築後の維持保全

長期優良住宅の認定を受けているということは、必ず、新築時に長期優良住宅建築等計画を作成しているはずです。この計画にそって所有者は対応していかなければなりません。

計画の中で、建築後の住宅の維持保全の方法及び期間、維持保全に係る資金計画も定めていますから、書面で内容を確認しておきましょう。計画通りの維持保全をしていく必要があるのです。

ここでいう維持保全とは、住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、給排水設備について、点検又は調査を行い、さらに必要に応じて修繕や改良を行うことです(長期優良住宅の普及の促進に関する法律において規定されている)。

計画には、新築後2年・5年・10年などの期間で定期的に点検することが盛り込まれているはずですから、その通りに点検を実施し、その結果に応じて必要な補修対応をしていこうということです。本来ならば、法規で定められなくとも、住まいを長持ちさせるためには必要なことですね。

自治体によっては、定期点検の時期になれば通知を発送するところもありますが、そうでないところもあります。基本的には所有者が自ら計画を把握して定期点検するようにしましょう。

 

長期優良住宅建築等計画の変更

長期優良住宅建築等計画を変更したい場合、あらかじめ所管行政庁から変更の認定を受けなければなりません。勝手に計画を変えたというだけではだめなのです。

 

地位の継承

長期優良住宅では、計画により認定計画実施者(通常は所有者)が明確になっています。長期優良住宅の所有者が亡くなったときには相続が発生しますが、相続により新たに所有者となった人は所管行政庁の承認を得ることで、その地位を承継して認定計画実施者になることができます。

また、長期優良住宅も中古住宅として売買されることがありますが、売買によって新たにその住宅を取得した人も所管行政庁の承認を得ることで、その地位を承継することができます。

相続であっても売買であっても、所管行政庁の承認を得るために手続きが必要であることを覚えておく必要があります。

 

長期優良住宅を取得した人(所有者)が知っておくべき注意点

ここからは、長期優良住宅を所有する人が注意すべき点を解説します。知らずに定期点検をせずに放置することで、大きく損してしまうことがあるので注意しましょう。

 

改善命令や長期優良住宅の認定の取り消しもある

所有者は、長期優良住宅建築等計画に従って定期的に点検し、必要に応じて補修等の対応をしなければならないことは前述の通りです。長期優良住宅建築等計画に従って維持保全(点検や必要な補修)をしていないときには、所管行政庁が改善命令を出す可能性があります。

また、場合によっては長期優良住宅の認定を取り消す可能性もあります。

所管行政庁は、長期優良住宅建築等計画に従って対応しているか確認するため、所有者へ報告を求めることができるため、実際に報告を求めることがあります。所有者がこの報告をせずに放置したり、虚偽の報告をしたりした場合には、30万円以下の罰金に処せられることがあります。

こういった報告・罰金・改善命令・認定の取り消しについては、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定されていることです。

 

長期優良住宅の認定が取り消されたときのリスク

万一、長期優良住宅の認定を取り消されてしまった場合のリスクについて考えておきましょう。国土交通省が公開している資料のなかにも、長期優良住宅の認定を条件としている補助金や税の優遇措置等を受けている場合、認定の取り消し後に返還を求められることがあると明記されています。

たとえば、住宅ローン控除や登録免許税、不動産取得税、固定資産税で優遇を受けた金額の返金といったリスクがあります。

また、認定を取り消されることは、資産価値にとってマイナスに作用する可能性もあります。認定を受けるために手間やコストのかかった分、将来の資産価値にプラスになるところが、余分にかけたコストが無駄になってしまう可能性があるわけで、もったいないですね。

長期優良住宅としての価値は、これから将来にかけて認められていく可能性があるものです。こういったことも考慮して、維持保全(定期点検や補修対応など)を計画通りに実行するようにしましょう。

定期点検は専門業者に依頼する方法も有効ですので、「長期優良住宅の定期点検(5年・10年など)」も参考にするとよいでしょう。

 

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