住宅の新築工事の一般的な工期と適正な工期
未完成の建売住宅を購入するときや注文住宅をこれから新築するとき、完成するまでの工期がどれぐらいであるか知りたいですね。工期や完成時期を知ることで、入居できる時期もわかるわけですから当然のことです。
来年3月末までには新居へ引越ししておきたいと考えれば、工期を考慮して逆算すれば、いつまでに着工(工事に着手)しなければならないかわかります。ここでは、新築住宅の工期についての基礎知識や一般的な工期について学ぶことができます。
新築住宅の工期に関する基礎知識
住宅の新築にかかる工期について、以下の順で解説していきます。
- 新築の工期とは?
- 低価格な住宅は工期が短い
- 高額な住宅は工期が長い
- 建売住宅も注文住宅も工期は価格と比例する
- 住宅の工期(建築期間)は短縮化している
それでは、順に見ていきましょう。
新築の工期とは?
まず、新築住宅の工期の意味について説明します。工期とは、工事にかかる期間のことで、着工から完成までにかかる期間を指しています。但し、建築会社やハウスメーカーによって、何をもって着工と説明しているか、何をもって完成としているか、説明内容や解釈が異なることもあるため注意が必要です。
例えば、地縄張りや掘り方の開始を着工としたり、地盤改良工事への着手を着工としたりすることがありますし、建築会社の社内検査完了をもって完成としたり、買主や施主の完成検査をもって完成としたり、さらには建築基準法に基づく完了検査後の完了検査済証の発行をもって完成としたりすることがあります。
そして、何をもって完成とするか曖昧になっていることも非常に多いです。
建築会社やハウスメーカーから工期について説明を受けるときには、着工と完成の定義をどう考えているか質問してメモしておくとよいでしょう。
低価格な住宅は工期が短い
住宅の工期を見る上で知っておくべき基礎知識の1つとして、建物価格と工期の関係です。近年はローコストを武器として多くの住宅を供給する住宅会社がいくつもあります。こういった低価格な住宅の多くは、工期が全体の平均に比べて短いものです。
工期が短いということは、それだけ人件費を抑えられるということです。建築コストは材料費や人件費によって構成されますが、このうちの人件費を抑制できることは低価格化を実現するうえで重要なことです。
「時間=コスト」ですから、低価格な住宅ほど工期が短いことが多いのです。
但し、人件費の抑制は無理な工期の短縮化を進める要因にもなっており、この無理な工期短縮が施工品質の低下にもつながる問題を引き起こしている現状があり、住宅購入者が注意しなければならない点です。
高額な住宅は工期が長い
「時間=コスト」ですから、逆に言えば、高額な住宅は工期が長いということが言えるのでしょうか。
高額な住宅の代表格が大手ハウスメーカーですが、大量供給されている低価格な建売住宅に比べれば、工期が長いのは事実です。しかし、使用材料の工業化が非常に進んでおり、ユニット化した製品を現場で施工していくことで以前よりは随分工期が短くなっています。
地場の工務店より高額であるものの、工期は大手ハウスメーカーの方が短くなることが増えました。
建売住宅も注文住宅も工期は価格と比例する
建売住宅と注文住宅において、工期に差があるものでしょうか。建物のプランが全く同じものであれば、そう工期に大差はないものですが、こだわりのある注文住宅となれば工期が長くなる傾向にあります。
ある程度決められたプランのなかから選択しているような規格住宅のようなものであれば、ユニット化した製品を使用して建築できるため、注文建築でも工期を短縮することはできます。
また、「時間=コスト」ですから、建売であっても注文建築であっても工期が長くなる住宅であれば、価格があがる傾向にあります。
住宅の工期(建築期間)は短縮化している
住宅の建築は工業化が進んでいるため、工期も短縮化が進んできました。大手ハウスメーカーが工業化を進めているのは多くの人がご存知ですが、地場の工務店でも工業化された製品を多く取り入れて工期短縮を実現しています。製品は何も自社生産しなくても、メーカーから購入できるため、会社の規模に関係なく工業化が進んでいるのです。
工期短縮で浮いた経費分を消費者への販売価格の値下げに割かれているのであれば、消費者のメリットにもなりますが、そうでない(会社の利益やその他の経費とする)ことも多いです。
新築住宅の着工から完成までの一般的な工期と適正な工期
実際にどの程度の工期がかかるものか、建築会社の種別ごとに見ていきましょう。以下で示す工期は、2階建て住宅で建物面積が30坪程度のものをイメージしておりますが、会社やその会社の商品、さらには建物プラン、時期(忙しさ)などの諸条件に影響を受けることですから、参考程度としてください。
プレハブ系の大手ハウスメーカー
木造のパネル工法や軽量鉄骨のプレハブ住宅を建築するハウスメーカーの工期は、概ね3ヵ月程度です。建築中に第三者検査を実施してきた経験から、3カ月未満で完成することもあれば、4カ月ほどかかっていることもあります。
ハウスメーカーにもよりますが、工法・構造・プランによっては半年程度の工期を要することもあります。
このジャンルに該当するメーカーでは、工期にゆとりを見て計画していることが多く、説明を受けた工期がほぼ適正な工期であると考えてもよいでしょう。
低価格な建売住宅
低価格を売りにするだけあって、工期短縮を優先している印象がありますが、実際に工期は短く、2カ月前後~3ヵ月です。2カ月未満で完成させる住宅も多く、3ヵ月かかることは稀です。
このジャンルに該当する住宅は、低価格実現のために工期に無理をしていることが多く、施工品質を下げないためにも3カ月程度かそれ以上の工期が本来の適正な工期だと考えます。しかし、同じ価格で工期延長を要望することは無理ですから、施工品質の確保のためにも第三者による住宅検査も検討するとよいでしょう。低価格だけに検査費用を負担しても価格面のメリットは大きいですね。
小規模工務店
小規模な地場の工務店では木造軸組工法(在来工法)を採用していることが多いですが、この場合、工期のばらつきが多いです。住宅検査でかかわってきた範囲では、3ヵ月~4カ月程度がほとんどですが、途中で下請け業者の手配がスムーズにできない等の理由で半年程度かかっている事例もあります。
また、地方などでは、職人が一人で作業する期間が長い等の理由で半年以上かけて建築する事例が今でも多数あります。会社によって大きな差が出ることが多いため、契約前に工期をきちんと確認し、契約書で明記して頂くよう注意しなければなりません。
設計事務所に設計を依頼して、工事を設計事務所の紹介などで工務店に発注するような注文建築である場合も、この小規模工務店に該当するものです。
小規模工務店による新築については適正な工期の検討は少し難しいものです。前述したように、現場にかける人数の相違もあるため、客観的に判断するのは容易ではありません。よく工務店から工期について説明を受け、詳細な工程表を提出してもらうようにしましょう。
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