木造軸組工法の一戸建て住宅の構造金物取り付け後のチェックポイント
新築住宅の施工で最も心配するのは、やはり主要な構造部分でしょう。住宅の基礎や骨組みがしっかりしていなければ、耐震性・耐久性の面で不安なものとなります。そこで、今回は木造軸組工法の構造部(骨組み)のチェックポイントについて写真付で解説します。
軸組工法とは在来工法とも呼ばれていますが、土台の上に柱と梁と筋交いなどで骨組みを構成しているものです。古い住宅では筋交いがなく、耐震性が非常に弱いものもありますが、今の新築の木造軸組工法では筋交いは必須です。
木造でも工法によっては、筋交い以外で耐力壁を構成するものもありますし、筋交いと併用するものもあります。今回、取り上げているのは木造の軸組工法ですから、筋交いのある住宅です。
筋交いのチェックポイント
・筋交いの位置と種類(シングル・ダブル)
筋交いをチェックするポイントは、まずその位置です。筋交いの配置が図面通りであるか確認しなければなりません。平面詳細図などに筋交いの位置が載っているはずですから、現場と図面に相違ないか付き合わせします。
筋交いの配置確認で注意すべき点は、シングルとダブルの違いです。
上の写真がダブルの筋交いです。
そして、こちらがシングルの筋交いです。
ダブルの筋交いはたすきがけになっていますが、シングルはなっていませんね。これが両者の違いです。どの位置の筋交いが、シングルであるかダブルであるかは図面で明確になっているはずですから、必ず図面と照合するようにしてください。
アネストの行う住宅検査でも、筋交いの位置や種類(シングル・ダブル)が間違っていた事例が何度かありました。
現場には柱などに図面を貼り付けていることがよくあるのですが、筋交いの位置を間違っていた現場では、貼り付けてあった図面を見てみると別の住宅のものだったという、驚くようなこともありました。全体の形状は似ているものの、よく見ると異なるのです。
数棟の建売住宅の分譲現場では、似たようなプランの住宅が多いです。また、別の分譲現場であっても似たプランを用いることも多いですから、現場監督が図面を持ち出すときに間違ったのでしょう。
シングルとダブルの誤りの事例は、単純に現場でよく確認していなかったようでした。なかには、施工後に気づいているふしがありならば、面倒だからかそのまま進めようとしていたひどいケースもありました。筋交いは構造上の計算を考慮した上で配置が決まっていますから、間違いが起こると構造上の問題が出る可能性が高いです。注意してチェックしましょう。
・筋交いの寸法と筋交い金物の種類と取り付け状態
筋交いのチェックポイントは、その位置と種類だけではありません。材料の寸法(例えば、45×90)が図面通りであるか確認する必要があります。
また、指定の金物で留められているか、1つずつ丁寧に確認していかなければなりません。金物は手が届く範囲だけでも緩みがないかチェックしておきましょう。
壁と床のチェックポイント
外壁や床をチェックするときの大事なポイントは釘のピッチです。
上の写真は外壁の釘のピッチを計測しているところです。図面・仕様通りであるか確認するのですが、この写真の住宅では外壁の外周部分が100mm間隔(ピッチ)で、中央部分は200mm間隔(ピッチ)と仕様通りになっていました。
上の写真は床の合板の釘の間隔(ピッチ)を計測しているところです。こちらも仕様通り150mm間隔(ピッチ)になっていました。各フロアで計測して確認していかなければなりません。もし、間隔(ピッチ)が開きすぎている場合は、間に増し打ちして対処しておくとよいでしょう。
ホールダウン金物やその他のチェック
・ホールダウン金物
構造検査のときには、金物関係のチェックが非常に重要なものであり、その大事な金物の1つにホールダウン金物があります。
上の写真は土台に取り付けられているホールダウン金物で、下は梁に取り付けられているものです。
実際の住宅検査では、土台に取り付けられているホールダウン金物の方に問題が起こっていることが多いです。その一例が下の写真です。
ホールダウン金物が土台からはずれてしまっています。これは極端な例の写真ですが、芯ずれを起こしている事例はアネストの住宅検査で何度も指摘されていますので、注意してチェックした方がよいでしょう。ホールダウン金物の施工ミスを対処せずに放置することは、基礎と木造部分の緊結不足となってしまいます。
金物は他にもあります(上の写真)から、1つ1つ図面通りであるか確認できる範囲の接合金物を見ておきましょう。
・床・柱・土台などの含水率
木部の含水率の計測についてです。
上の写真は土台の含水率を計測しているところです。住宅検査では、このように水分計を用いて含水率を計測します。柱や梁といった構造材はJAS規格では20%以下とされ、床の合板は14%以下とされています。
しかし、一般の住宅購入者は水分計を持っていないため、この計測は難しいですね。建築会社が計測チェックしているのであれば、その場に立ち会って見せてもらうとよいでしょう。これができず、かつ大量の雨に濡れ続けていて心配な場合には第三者の専門家に依頼するのも方法です。
・柱・梁などの位置・寸法・大きな割れ
最後に、柱や梁などのチェックについてです。位置は図面と照合して相違ないか確認し、また使用されている材料の寸法を確認して仕様通りであるかチェックしなければなりません。そして、大きな割れや欠損がないかも確認しましょう。
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