建売住宅の引渡し前にキズが多いときは要注意
新築の建売住宅を購入したとき、引渡し前には買主による立会い確認の機会があるはずです。これは、施工ミスなどがないか現地で確認する機会のことで、内覧会や完成検査立会いなどと言うことも多いです。その立会いのとき、建物の床や壁、棚など、様々な箇所でキズが見つかれば、多くの人にとって残念な気分になることでしょう。
せっかく購入した新築住宅にも関わらず、最初から傷だらけなんて、、、
その気持ちはよくわかりますが、キズが多いというだけであまり大騒ぎせず、本当に大事なことが何かよく考えて対応した方がよいでしょう。今回は、購入した建売住宅で、いや注文建築でもそうですが、引渡し前の立会いの時点でキズが多いときに買主が適切に対応するために必要なことや注意点を解説します。
1.キズの多い建売住宅の引渡し前の立会い
建売住宅において、売買契約後の後、引渡し前に行う立会いの機会は、買主が施工不良などの是正を売主に対して求める非常に重要なものです。そのため、買主はじっくりと時間を割いて建物の状態を確認しなければなりません。
そして、そのときにキズの多い住宅であったならショックを受ける人も多いでしょう。しかし、キズはそう大した問題ではありません。
1-1.キズ自体は大した問題ではない
引渡し前の立会い時に見つかるキズは、全て表面的な部分(仕上げ材)の傷です。壁クロスの傷、床フローリングの傷などですね。これらは、実は簡単に補修することができますし、丁寧に補修してもらえば、どこにキズがあったのか探してもわからないくらいになります。
キズが多いとショックではありますが、これだけで大慌てするほどではないわけです。
引渡し前にキズを綺麗に補修してもらっても、入居してしばらくすれば、自分たちの生活のなかでキズが付くことも多いです。お子さんがいる過程では、すぐに傷だらけになることも珍しいことではありません。機能的にも、性能的にも悪影響のないものならば、慌てず、大騒ぎせず、丁寧に補修をお願いするようにしましょう。
むしろ、「キズ以外の問題点がないか?」ということに意識を切り替えたいものです。
1-2.キズが多い建売は施工不良も多い
引渡し直前の時期にも関わらず、キズが多い建売住宅であった場合、その理由は以下の2点が考えられます。
- 工期がきつくて突貫工事をした
- 現場管理が適切にできておらず、社内検査も適切に実行していない
工事が予定よりも遅れてしまったとき、無理に工事を急がせてしまうことで雑な作業を繰り返してしまうことが多いです。そのため、引渡し前の立会い確認のときに多くの傷が残っていて補修する暇もないことがあるのです。
また、建築中(工事中)の現場管理をきちんとしていない建売住宅では、完成時の社内検査もまともに実施していないことが多く、その結果としてキズが多いということも少なくありません。営業マン出身の不動産会社社長が多いですが、あまり現場の管理や施工品質に気配りしない傾向があるのです。
キズ自体は大きな問題ではないものの、キズは工事中の現場管理や社内チェックができていない証なので、他の施工不良がないか心配になるわけです。そして、むしろ表面的なキズよりも、他に機能面や性能面、安全面に関わる施工不良がないか確認すべきでしょう。
1-3.キズの多い家で見つかった施工不良の事例
機能、性能、安全に問題のある施工不良とはどういうものでしょうか。引渡し前の立会いの際にキズが多かった住宅で見つかったこれらの問題事例をいくつか挙げておきます。
○バルコニーの施工が雑で雨漏りリスク
一級建築士などの専門家が立ち会う際は、バルコニーの仕上り工事は大事なチェックポイントとしてとらえています。なぜならば、バルコニー周りからの雨漏り事故があまりにも多いからです。
部屋からバルコニーへ出る掃き出し窓の周りのシーリングの状態をチェックしたところ、部分的にシーリングができていない箇所や非常に雑になっている箇所がありました。これはよくある指摘の1つで、近い将来の雨漏りの原因になりうるため、必ず補修を求めなければなりません。
○屋根裏の断熱材が無茶苦茶に置かれている
専門家による大事な調査箇所の1つに屋根裏があります。点検口から屋根裏の内部を覗き見たところ、天井材の上に丁寧に敷設しておくべき断熱材(グラスウール)がかなり適当な感じで置かれており、隙間だらけになっていました。ちょっと隙間があるというレベルではなく、もう無茶苦茶で、ただそこに断熱材を置いただけの状態です。
断熱性能がきちんと発揮されることのない状態なので、当然ながら敷設しなおしとなりました。
○玄関やポーチのタイルが大量に浮いている
玄関の床や玄関ポーチには、タイルが使われていることが多いですが、打診棒で確認していくとタイルがいくつも浮いていました。1つか2つだけ浮いていることは多いですが、よほど雑に施工したのか多くのタイルが浮いている状態です。
タイルが浮いていると、通常使用でも割れやすくなるので、補修した方がよいものです。
○畳下地にカビ
和室の畳をめくってみると、その下にボード(下地材)があります。この下地材に大量のカビが発生していました。他の現場では畳の表面までカビが出ていたこともあります。湿った材料を乾燥させることなく使用したのかもしれません。
こういった機能、性能などに問題のある施工不良が見つかることは少なくないので、よく確認したいものです。
2.引渡し前の立会い確認の注意点
次に、建売住宅の引渡し前の立会い(=内覧会)で買主が注意すべきことを紹介します。初めての立会いではわからないことが多いのは無理もありません。専門家に依頼せず、自分たちだけでチェックするならば、以下のことには注意したいものです。
2-1.キズがなくて綺麗でも油断できない
キズの多い住宅では要注意であることは既にお伝えした通りです。それでは、キズがない住宅ならば安心してよいのかといえば、そう簡単な話でもありません。なぜならば、前述の「1-1.キズ自体は大した問題ではない」でも書いた通り、キズは簡単に、すぐに補修できるからです。
工事の途中が雑であったとしても、最後の仕上げ工事のところだけはきちんと補修してから買主による立会い(内覧会)を行っているケースもあります。仕上げ工事が綺麗、つまり見た目が綺麗だからといって油断してよいというわけではないのです。
2-2.時間を十分にとる
引渡し前の立会いは、30分くらいで終えてしまう人が多いです。ざっくりとキズや汚れの有無だけを確認して、あとは採寸だけして帰るというケースです。
建物の大きさやプラン、そして施工品質にもよりますが、専門家が立ち会って住宅診断(ホームインスペクション)した場合には、1.5~2.5時間程度はかかります。オプションで床下や屋根裏の調査まで依頼すれば、3時間を超えてくることが多いです。
専門家でもそれだけの時間をかけてじっくりチェックするわけですから、30分程度の確認だけで満足して帰るのは、せっかくの確認の機会を十分に活かし切れていないことの証でもあります。時間を十分にとって確認するようにしてください。
2-3.「そんなものですよ」に要注意
立会いのときに何か気になる症状を見つけて、売主や建築会社の担当者に伝えると、「そんなものですよ」と言われることがよくあります。これを聞くと、自分が細かなことを言いすぎているのか、誤った指摘をしているのかと不安に感じることでしょう。
相手とは経験値が違いますから、「そんなものですよ」と言われてしまえば何も言えないという相談は後を絶ちません。それが本当に、問題ないものかどうかは知識と経験がないと判断できないものです。ただ、「そんなものですよ」をあまりに連発するようならば怪しいですね。
一度、第三者の専門家に相談してもよいでしょう。
今回の記事のポイントは、以下の3点です。
- キズがあるからといって大騒ぎしない
- それより、他の施工不良がないか確認する
- 引渡し前の立会いには時間を十分にとって臨む
引渡し前の立会いが無事に済めば、もう新居での暮らしもすぐですね。引渡しまでは、注意して対応しましょう。
○専門家に依頼するなら