売主目線で見る住宅診断(ホームインスペクション)のメリット・デメリット
住宅の売買のときに多く利用されている住宅診断(ホームインスペクション)ですが、買主側のメリットとデメリットについては以前「買主目線で見る住宅診断(ホームインスペクション)のメリット・デメリット」でご紹介しました。
今回は、中古住宅の一般個人の売主にとって、住宅診断(ホームインスペクション)のメリットやデメリットにはどういったものがあるかご紹介します。
売主にとっての住宅診断(ホームインスペクション)のメリット
まずは売主の立場から見て住宅診断(ホームインスペクション)を実施した場合にはどのようなメリットがあるのか確認しましょう。主に以下の2点があげられます。
- 買主に安心感を持ってもらえて売却時のセールスポイントになる
- 売却前に瑕疵・不具合の存在がわかる
この2点のメリットについて解説します。
買主に安心感を持ってもらえて売却時のセールスポイントになる
もともと買主が購入判断などのために、買主の費用負担で住宅診断(ホームインスペクション)を利用することが一般的な利用法であったのですが、最近は売主が自ら費用負担して利用するケースも増えてきました。
その狙いは、買主に安心感を持ってもらうことで、購入してもらいやすくなるのではないかという点です。
売主は当然のことながら、売主に有利に売却を進めたいと考えます。有利にはとは、個々の売主の都合にもよりますが、できる限り高く、できる限り早くなどの想いがあることが多いです。
そのためには、綺麗に掃除や整理整頓しておいて、よい印象を持ってもらうということも有効ですが、それ以外にも建物の状態に対して安心感を持ってもらうことはプラス材料になりますね。建物の状態への安心感は大事なセールスポイントになるのです。
但し、ここで売主が知っておかなければならないこととしては、売主が実施した住宅診断(ホームインスペクション)の結果というものを、全ての買主が同じように受け止めるとは限らないという事実です。買主によっては売主が実施したものは信用できないと判断する人も少なくありません。実際に、都合の悪い診断結果は隠してしまうという人もいることから、買主の気持ちもわかるものです。
売却前に瑕疵・不具合の存在がわかる
もう1つの売主のメリットは、売却する前に瑕疵や不具合の存在を把握できるということです。これがなぜ売主のメリットになるのか不思議に思う人もいるかもしれませんので、説明します。
売主が自宅を売却した後、しばらくしてから買主より瑕疵担保責任を追求されることがあります。建物に何らかの瑕疵(シロアリ被害など)があったときに、その補修等の対応を求められるものですが、その対応の手間やコスト負担が生じます。
コスト負担は瑕疵がある以上、仕方ないものですが、何よりも売主と買主の間で補修する範囲などについて意見が相違してしまい、その交渉等の手間や時間が大きな負担となることがあるのです。売却した後もその住宅のトラブルについて長く対処することになっては大変ですね。
売却前の住宅診断(ホームインスペクション)でそういった瑕疵などがあることがわかれば、それを補修しておくことで、後々に揉める可能性は大きく下がります。そして、必要な補修を先にしておくことで、買主の印象をよくして売却が有利に運ぶこともあります。
売主にとっての住宅診断(ホームインスペクション)のデメリット
次に売主にとってのデメリットについても確認していきましょう。以下の3点がデメリットとして考えられます。
- コスト(住宅診断の費用)がかかる
- 瑕疵・不具合があれば補修等の対応が必要なことがある
- とても売れない状況のとき(ひどい住宅診断の結果が出るとき)がある
これら3点についてもう少し詳しくご紹介します。
コスト(住宅診断の費用)がかかる
住宅診断(ホームインスペクション)をするには、そのコスト(診断費用)が必要となりますから、これはわかりやすいデメリットとなります。
住宅診断(ホームインスペクション)をすることによるメリットと比較して、この負担をただの費用とみるのか、投資と見るのかはあなた次第ですね。
瑕疵・不具合があれば補修等の対応が必要なことがある
住宅診断(ホームインスペクション)をすれば、補修すべき箇所などが指摘としてあがることはよくあることです。それは軽微なことから重大なことまで、物件によっていろいろなものがありうることです。
これらをそのまま買主に情報開示して売却するという考え方もありますし、補修してから売却するという考え方もあります。補修してから売却するのであれば、補修費用の負担が生じますから、それをデメリットと受け取ることもできます。
しかし、補修しなければ売却しづらいことですし、こういった不具合などの指摘を買主側からの住宅診断(ホームインスペクション)で発見された場合には印象もよくないことがありますから、よく考えて対処すべきでしょう。
但し、築年数が古くて買主が購入後に大規模リフォームをする前提となる売買もありますが、その場合には結果的には必要なかった補修工事というものもあります。築年数や建物の状態、買主の動向を見ながら柔軟に判断していくことも考えるとよいでしょう。この点は、不動産仲介業者ともよく相談した方がよいですね。
とても売れない状況のとき(ひどい住宅診断の結果が出るとき)がある
売主にとって最も困るのは、住宅診断(ホームインスペクション)で非常にひどい結果が出たときです。たとえば、床下の調査をした際に長年にわたり床下で漏水しており、土台や大引きの腐食が相当に進行してしまっていて補修するのにもあまりに大きなコストがかかるという場合です。
売主が補修するにはコスト的に厳しい状況であり、且つ、壁内など見えない箇所でももっと問題があるかもしれないとなれば、さらに負担が増してしまいます。
もちろん、そのまま黙って売却してしまっては買主が強く責任と負担を求められることになりますし、対応に苦慮することになるでしょう。
それでは、そんなものは知りたくないから住宅診断(ホームインスペクション)をしない方が良いのかと言えばそうでもありません。そのまま住み続けるには危ないぐらいの問題ならば、早期に補修や転居などを考えなければいけないわけですから、やはり建物の状態を把握しておきたいものです。
買主が希望する住宅診断(ホームインスペクション)の受け入れ
売主としては、自らが住宅診断(ホームインスペクション)をするかどうかは、ここで挙げたメリットやデメリットを比較して考えるとよいでしょう。
自らが利用しなかったとき、買主が住宅診断(ホームインスペクション)を希望することはよくあることですが、このときには快く受け入れてあげた方が印象はよいです。診断に費用な時間を十分に与えてあげて、ゆっくり診てもらうとよいでしょう。
不動産仲介業者は、仲介手数料が成功報酬であるため、住宅診断(ホームインスペクション)を契約後や引渡し後にするようにと少々強引に買主を説得することがあります。とにかく取引を成立させて自分たちの売上・利益を確保しようとするのですが、後から瑕疵が見つかっても売主が責任を負うのであれば、売主のメリットにはならない判断です。
売主にとっても買主にとっても基本的には契約前にしておいた方がよいことですから、不動産仲介業者の意見を重視しすぎず慎重に考えた方がよいでしょう。
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