マンション購入は他人の失敗から学ぶ(床と壁の遮音性)
マンション選びは何を重視すればよいか?何をチェックすればよいか?と相談されることがあります。チェックポイントは多いので、一度のコラムでお話できるものではありませんが、今回はある購入者の失敗例をあげて説明します。
失敗例を教えてほしいという声は多いですが、他人の失敗を面白がるだけではなく、これを前向きに活用してください。
1.マンションの戸境壁の厚さと遮音性
あるマンションを購入した方の失敗談から学んでみましょう。
このマンションは、某有名建築家が設計したというデザイナーズマンションです。有名建築家が手がけただけに購入前の入居者の満足度といいますか期待度は相当に高かったようですが、残念ながら入居後に問題が発生しました。
隣戸から漏れてくる音があまりにも大きく、非常に気になるとのことです。建築会社にこのことを告げて原因を調査してもらった結果、マンションの戸境壁(隣の住戸との境の壁)の厚さが150mm、床のコンクリートスラブの厚さが150mmであったので、この厚さならば想定される程度の音だということです。
マンションでは音に関するトラブルが非常に多いものですが、隣からの音は戸境壁の工法・仕様によるところが大きく、コンクリートの厚さが150mmであればある程度は音が聞こえるのもうなずけます。古いマンションでは120mmということもありますが、このマンションの建築時期を考えると150mmは薄い方でした。
マンション購入者の多くは、購入を決める時点ではこの厚さで音の問題が発生する確率が同時期の他のマンションよりも高いと判断するだけの知識がありません。
マンションにおいては、遮音性能が大事な要素であることは設計者や建築会社、売主ならばわかっているはずですから、同時期の他のマンションよりも劣るのであれば、説明してほしいものですが、不利な条件だから説明しなかたのかもしれません。もしくは、販売担当の営業マンには知識がなかったのかもしれません。新築マンションの営業マンには、建築に関する知識が乏しすぎる人があまりにも多いのが悲しい現実です。
住めば都と言いますが、残念ながらこのようなマンションを入居者が気に入ることができずに賃貸に出す人が続出してしまい、当然ながら管理面も悪くなってきてしまいます。資産価値も・・・
相談者の話では、気を使って赤ちゃんが泣くと廊下へ出てあやす始末です。
デザインや設備だけでマンションを選ぶとこんなことになることがあるので、注意してください。
2.スラブ厚とマンションの遮音性
前の記事はマンションの戸境壁の遮音性についてでしたが、次は床の遮音性に関することです。床の遮音性はそのコンクリートスラブの確認が重要です。
コンクリートスラブと聞いて何のことがわからなかった人は、まだマンションを購入するには早すぎます。これは、マンション購入に際して必要な基礎知識ですから。
コンクリートスラブとは、部屋の床仕上げ材(フローリングが多い)の下にある下地材の更に下にあるコンクリートのことです。コンクリートで造られた床版ですね。逆に天井の上にもコンクリートスラブがあるわけです。一般的な鉄筋コンクリート造のマンションならば、部屋の上下と横はコンクリートに囲まれていると思ってください。
横(つまり戸境壁)の遮音性については上の記事の通りです。
マンションの騒音問題は、横方向だけではなく、上下方向でもよく起こります。むしろ、上下の方が多いですね。上階からの物音が気になる、または下階から音のクレームが来るといった具合です。
コンクリートスラブの厚みをスラブ厚と呼びますが、これが厚いほど遮音性が高く音を抑えてくれます。どれくらいの厚さがよいかといえば、工法にもよりますが220~250mmが目安です。古いマンションならば150mmや180mmという時代もあったので、中古マンションを購入するときには音の問題はある程度の覚悟が必要です。
最近の新築マンションで200mmであれば、薄いでしょう。
しかし、実はコンクリートスラブの厚さだけで判断しきれるものではありません。床の工法にもいろいろありますが、ボイドスラブ工法(スラブに空洞を設ける工法)であれば、空洞を設けていない床に比べて同じ厚さなら遮音性に関しては不利です。
とはいえ、ボイドスラブ工法を採用するマンションでは、一般的にはコンクリートスラブの厚さが厚くなっています。270mmや300mmといった具合です。
上下階の音の問題はこれまでも、これからも重要なテーマであり、購入者からのクレームも多いことから、最近のマンションでは工法とその特徴をパンフレット等で丁寧に説明していることも多いです。きちんと説明をうけて理解してから購入判断してください。
今回のコラムでは、マンションの床と壁の遮音性について取り上げました。購入前によく確認しましょう。
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