前回の「住宅購入の売買契約と手付金」では、売買契約や手付金に関する基礎知識をお伝えしました。そこで、今回から売買契約書に関する注意点をお伝えします。
売買契約書は難解でも理解すべき
住宅の売買契約書というものは、一般の人が見てもすぐに理解し内容を把握するのは難しいでしょう。多くの専門用語が書かれていて、その1つ1つを理解するように言われたとしても無理というものです。
しかし、住宅を購入する機会は人生のなかでそう何度もあることではありませんし、大金を支払うものですから、面倒なことだと感じても、時間がなくとも必ずその内容を熟読して理解に努めるべきです。
売買契約書は契約日よりも前に入手すべき
売買契約書の内容を理解するためには、契約締結の前に不動産業者からもらっておく必要があります。もらっておくべき書類は、売買契約書と重要事項説明書です。
不動産業者に、「契約日よりも先に読んでおきたいので、写しを送ってほしい」と依頼してください。これを不動産業者が拒否することは普通ではないことですから、安心して請求して問題ありません。万一、拒否するようなことがあれば、それは信用できない業者ですから購入中止を考えた方がよいです。
事前に入手した契約書類を熟読しておき、わからない箇所や不明瞭な点があれば、不動産業者に質問したり、必要に応じて変更や修正を求めたりしましょう。もちろん、自分自身で調べてみるのもよいでしょう。この質問等は売買契約の場で行うよりも、事前にしておくことをお奨めします。
なぜならば、契約の時に不動産業者からきちんとした説明や回答をもらえるとは限らないからです。質問を聞いてから調べるようなこともありますから、事前に聞いておかないと契約日の延期等の対応が必要となるのです。
そのようにして、不明な点等を解決したうえで売買契約の当日を迎え、改めて説明を受けた上で署名・押印するようにしてください。
特記事項や備考欄に注意
「売買契約書の記載された内容のうち、どこに絞ってチェックすべきであるか」「特にどこに注意して読むべきか」といった質問を受けることがありますが、一部にのみ絞って確認すればよいというものではありません。契約内容・条件が記載されているわけですから、全て重要であるということが前提です。
しかし、買主にとって不利な記述内容や注意すべきことがよく書かれているポイントはあります。
それは、特記事項欄や備考欄です。
買主に不利な内容や口頭で説明を受けていなかった対象物件に関する大事な情報が書かれていることがあり、買主がそれを承諾することになっていることはよくあることです。知らずに契約してから、「そんなことは聞いていなかった」と言っても後の祭りです。
特記事項欄や備考欄にはそういうリスクもありますから、注意して読んでください。
たとえば、以下のような文章が売買契約書に書かれておりました。
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時間帯・風向きによっては周辺の工場より臭気が感じられることがある。
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その買主は、仕事が休みである週末にしか物件見学していなかったために臭気を感じることはなかったのですが、平日には風向き次第で工場から臭気が漂ってくることがある立地だったのです。
また、隣地と購入物件の売主が境界位置について意見の食い違いがあり、揉めていることが書かれていたケースもありました。
こういった事項が書かれていても、きちんと読まず知らずに捺印してしまうと承諾したこととみなされますから、気づかずに読み流してしまいそうな小さな文字で書かれていることには注意をはらうべきでしょう。
但し、上の事例のような話や買主にとって不利な記載内容については、全てが不動産業者の悪意であるとは限りません。取引の仕方や建築トラブルなどもそうですが、悪意より無知によることが原因であったり、単純な記載ミスであったりすることが多いです。
単純ミスの事例としては、取引物件の住所が隣地になっていたケースもあります。ですが、悪意ではないから良いというわけではありません。重要な書類ですのでご自身で事前にきちんと内容を確認しておくことが大切です。
次回も契約時の注意点の続きについて、お話ししていきます。