マンションの傾き問題

横浜市のマンションで地盤改良工事が不十分なためにマンションを傾くという問題とが生じ話題となっています。2015年10月にニュースになったものですが、このマンションが販売されていたのは2006年からです。2006年といえば、あの構造偽装問題(姉歯事件)で世間が大騒ぎになっていた頃と重なります。

横浜市のマンションの傾き問題については、杭が支持層(地盤の強固な層)まで届いていないという地盤改良工事の施工ミスとされています。この問題を目にした住宅購入者のなかには、当然のことながら「自分の住宅は大丈夫だろうか?」「これから購入する住宅の地盤改良は問題ないだろうか?」と心配される方も多いです。

地盤調査の際に問題があったことや、その後の地盤改良工事に問題があったことなどが徐々に明らかになりつつありますが(執筆は2015年10月23日)、いずれにしても住宅購入時に地盤が心配な方が現実的にとることのできる対策があります。

1つ目は、地盤調査報告書(地盤調査データ)を閲覧して地盤の状態を把握することです。同時に、地盤改良工事の内容を地盤改良工事報告書で確認しなければなりません。

これらは一戸建て住宅であれば、その書類は売主や建築会社から写しを受領して確認するとよいでしょう。新築マンションであれば、販売センター(モデルルーム)に置かれている設計図書で確認することができるはずです。中古マンションであれば管理人室などに保管されている竣工図書で確認することができます。

但し、中古マンションで築年数が古い場合には竣工図書に地盤調査データが掲載されていないものもあります。また、中古一戸建ての場合は売主が地盤調査報告書を保管していない(新築時の売主等から受領していないことも含める)ことが多いのが残念なことです。

2つ目は、前述したように中古物件で地盤調査報告書を確認できない場合の対処方法です。近隣の地盤調査データを役所で確認できることがあります。役所へ出向き、住所を告げて近隣のデータを閲覧できないか聞いてください。

ただ、上記の2つの方法は専門知識の無い方が資料を見ても判断するのは難しいですから、専門家を同行して一緒に見てもらうことが前提となると考えた方がよいでしょう。そして、地盤調査データ(調査結果)が偽装されていた場合には、専門家を同行してもそこまで判断することは非常に難しく現実的ではありません。

この点が今回の横浜で起こったマンションの傾きと地盤問題の大きなポイントとも言えます。

そこで3つ目の住宅購入法です。それは築5年以上経過した中古住宅を購入するということです。地盤調査データの偽装があったり、地盤改良工事に問題があったりして、地盤沈下~建物の傾きといった問題が生じるのは、新築後早い時期に生じるからです。

建物の重さや埋め戻した土の重さで地盤が沈下していくわけですので、沈下して傾くのであれば、建物が完成した時点から症状が出始めるのです。なかには建築途中から沈下していくということもあります。特に鉄筋コンクリート造のマンションのように重い建物で工期も長いものとなれば、建築中からでも沈下する可能性はあります。

地盤沈下のスピードは一定ではありませんので、物件によって異なるものです。しかし、新築後5年以上経過しても沈下していないものが、他の要因もなく沈下が始まることはほぼ無いため、1つの目安としてよいでしょう。

地盤調査の偽装や地盤改良工事の施工ミスが心配な場合、新築住宅ではなく築5年以上の中古住宅の購入を考えるとよいでしょう。

新築一戸建ては検査できる

最後に4つ目の住宅購入法です。それは着工前(建築前)の新築一戸建て住宅を購入し、地盤改良工事に第三者の住宅検査を利用することです。仕様通りに施工されているかどうか、専門家に現場で実際に検査してもらうわけです。但し、地盤調査データに偽装がある場合には、その点についてはわからないため完全な方法とは言えません。

もちろん、住宅購入には地盤以外のことも考えなければなりませんので、様々なことも考慮して検討してください。

ホームインスペクションのアネスト

ホームインスペクション
第三者の一級建築士が、住宅購入・新築時などに建物の施工ミスや劣化具合などを調査する。新築(建築途中および完成物件)・中古住宅に対応。安心してマイホームを購入できる。