この数年、中古住宅の売買が賑わってきているという印象をもつ不動産業界関係者は多いことでしょう。マイホーム購入を考えるうえで、そんなニュースを見るなどして、なんとなく「中古住宅を買ってみようかな」と考える方も少なくないようです。
ただ、実際に中古住宅の売買がどの程度増えているのか、実は不動産業界関係者も知らない人が多いです(情報は簡単に取得できますが現場の営業マンは、あまり気にしていないことが多い)。そこで改めて中古住宅の市場動向を確認してみます。
中古住宅の売買件数についてはいくつかの指標がありますが、ここでは不動産流通機構(REINS)が公表しているデータを参考にしてみます。
上記は2006年度から2014年度の首都圏における中古物件(中古マンション・中古戸建て・その2つの合計)の成約物件数です。グラフを見たところ、2012年度から2013年度にかけて増加していることがわかります。
2006年との対比では、2014年度の中古物件の合計成約件数が12.5%の増加です。中古マンションが15%の増加であるのに対して中古戸建ては4.6%ですから、戸建て住宅はそれほど伸びていません。伸びているは中古マンションであって中古戸建てはそれほどでもないことは、物件選びをする上で知っておいた方がよいでしょう。
また、このグラフでは2014年度が2013年度に比べて7.5%の減少となっている点も気になりますので、2015年度のこれまでの動向も確認してみます。それが下のグラフです。
上記は各年の1~6月期について比較するためのグラフです(2015年度のデータがある期間にあわせている)。これによると、2015年度は前年と大きくかわりません。やはり2011年以前と比べて増加していると言えます。2006年度の同期に比べると18.7%の増加となっています。
但し、これらの数字を見てそれほど劇的な変化とまでは言えないように感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、そう安易に考えずに、同期間の新築住宅の動向もあわせて考えてみましょう。新築住宅については国土交通省の公表するデータ(建築着工統計調査報告)を参考にしてみます(下図)。
先にあげた中古物件の動向と明らかに異なることがわかります。新築住宅は2007年以降、顕著に減少傾向にあります。2008年9月にリーマンショックが生じて、その影響を最も受けたのが翌年の2009年です。その後、多少は回復傾向になったとはいえ、基の数値には程遠い状況が続いています。
ちなみに、この新築住宅のデータで「持家」とあるのは、注文建築です。分譲住宅には建売住宅や分譲マンションが含まれています。グラフでは、建売住宅と分譲マンションが一緒になっていますが、内訳としては分譲マンションの減少が非常に大きいです。
ここまで見てきて面白いのは、リーマンションショック後の中古住宅の動向です。2008年のリーマンションショックで新築がこれだけの影響を受けているにも関わらず、中古住宅は少しとはいえ伸びています。
少子高齢化やリーマンションショックなどにより住宅の売買件数(取引件数)が減ってきたなか、新築の不振とは逆に中古住宅の推移は大きく増加しつつあると考えてよいでしょう。
マイホーム購入といえば当然のように新築を見ていた時代から、中古住宅を買って暮らすという流れが確立しつつあるのは間違いありません。ただ、中古であるが故のリスクや注意点もあるので、「中古住宅の購入の流れ、注意点」でしっかり学んでください。