新築マンションを購入するときに知っておきたい基礎知識と注意点を購入の流れに沿って以下の順で解説します。
- モデルルームとパンフレット
- モデルルームと営業マンに注意
- 新築マンションの設計図書
- 売買契約の注意点
- 内覧会と引き渡し
モデルルームとパンフレット
新築マンションを購入検討するとき、多くの方が広告などを見てから、モデルルームへと足を運びます。モデルルームを見て新築マンション選びをすることは、今では当たり前のことになっていますね。
モデルルームへ行くと、営業の方の案内でパンフレットやモデルルームを見ながら説明を受けます。
大規模な新築マンションであれば、ビデオ上映までしていることもありますね。多くのマンション購入者がこれだけの情報で購入判断しています。
しかし、この段階で検討しているマンションのことをどれだけ知っているのでしょうか?数千万円の大金のために、大きな借入をして(住宅ローンを組んで)購入しようとしているマンションのことをどの程度知っているのでしょう?
自分が購入し永く暮らすマンションなのに知らないことが多すぎるということが、マンション購入で失敗する原因です。
パンフレットには、色々な情報が載っているように見えますよね?しかし、パンフレットの情報量には、マンションによってかなりの開きがあります。マンション購入の相談を受けるとき、基本的にはパンフレットを持参いただきます。
しかし、その内容によっては情報不足過ぎて、アドバイスに困るものも多いです。なかには表現が怪しかったり、誤解させようと意図的に作られているのではないかと思えたりするものまであります。
このモデルルームやパンフレットを、新築マンションを購入検討する人は大事な購入判断のための資料として見ていることでしょう。逆に、新築マンションを販売する側にとっては、販売するための資料として位置付けています。皆さんが購入判断のためと思っている資料は、販売するための資料なわけですね。
point
モデルルーム・パンフレット = 新築マンションを売るためのツール
このことは、改めて言うまでもなく当然のことなのですが、それでも新築マンション選びをされる多くの方が、モデルルームやパンフレットを購入判断の材料として重視しているので、あえて書かせて頂きました。
「新築マンションを売るためのツール」なわけですから、当然、その新築マンションの売り、つまりPR材料はしっかり載せていることでしょう。しかし、数千万円もの買い物をするときに、メリットだけを見て購入するわけにはいきませんね。やはりデメリットもチェックしておきたいものです。
また、パンフレットには新築マンション選びをしている方の誤解を招くような表現もしばしば見られます。いかにも、他のマンションよりも優れている方のような表現になっていながら、実は普通のマンションだった、、、なんてことがよくあるものです。
標準的な仕様のマンションでも良いわけですが、それを優れたものと誤解を与えるようでは問題だと思いませんか。この手法の1つとしてよく使われているのが、古い時代のマンションの仕様と比較した表現です。マンションの仕様は、長いスパンで見れば確実にレベルアップしています。工法、設備もそうですね。
例えば、コンクリート強度の設定も昔と今では標準クラスが異なります。当然、今の方が優れているわけです。それを昔の標準的な仕様との比較記事を掲載して、優れたマンションとの印象を与えようとしています。これはよく見られる手法ですので、注意しましょう。
最近の新築マンションと昔のマンションを比較して、対象マンションをよく見せるようするのは、日本語のトリックとでもいいましょうか、情報は正しく正確に伝えてほしいものです。パンフレットは売るためのツールだという基本は、よく頭に入れておいた方が良いでしょう。
モデルルームと営業マンに注意
まずはモデルルームの注意点です。モデルルームですから、とにもかくにも、お客様へ与えるイメージが第一となっています。それは、モデルルームに限らず広告やパンフレットも共通です。
それは、なんといってもモデル、なのですから、素晴らしいインテリアや雰囲気、非現実的なイメージが膨らんで、正確な判断能力が奪われる可能性大です。
よくお考えください。モデルルームはあなたの部屋ではなく、あくまでもモデルであるということを、そこで気持ちが高ぶり、買いたいという欲求だけが先走ってしまうのです。これではマンション販売業者の思うツボです。
モデルルームへ行く際は、メジャーだの、家具の寸法を書いたメモだのがいると言いますが、それよりもなによりも、「冷静さ」だけは是非忘れずに持って行っていただきたいです。
次に営業マンに関する注意点です。マンション分譲の営業マンは意外とマンションのことを知りません。そもそも建築の知識がありません。もちろん、全員ではありませんが、知らない方が多いという事実があります。もっと言えば、不動産の知識すら疑問なところです。
なぜ、不動産を扱う営業の者が、こんなにもマンション販売への知識をもっていないのでしょうか。それは明らかに、売っている側の意識が低いとしか言いようがありません。
今から人生をかけた大きな買い物をしようとしているお客様に対して、相当なリスクを抱えた決断をしようとしていることへの意識が低いのです。素人よりも少しでも詳しければ多少のことは誤魔化しがきいてしまうので、勉強不足だとしてもマンションは売れるのかもしれません。
良い営業マンとそうでない営業マン、その見分けの判断は難しいものです。営業マンの言うことをそのまま信じていいのかどうかわかりませんね。信じて失敗する可能性もあります。次のようなことがありました。
「阪神の震災を受けたことがあるため地盤が心配です」と、ある相談者からお話がありました。
そのことを営業マンに尋ねると、「ここ(建築地)は、地盤が元々強く、直接基礎で対応している」との説明を受けたそうなのです。しかし、こちらで地盤調査をした結果をみると、地盤はむしろよくありません。
地盤が弱くとも、それに応じた構造になっていれば良いのですが、そのあたりの説明は一切なく、「地盤は強い」と断言していたのです。
知らずに言ったのか、知っていて言ったのかわかりません。ただ、どちらにしましても、お客様に対してその対応はあまりにも誠実さに欠けます。もっと言えば、虚偽であり、だましているのです。
失敗した方が良く「良い人に見えたのですが・・・」と仰られますが、今までに何度このセリフを聞いたことでしょう。
あなたがマンションを買うという行為にどれだけのリスクがあるのか、また購入を決めることの重大さを分かっていただけましたでしょうか?ほとんどの人が、パンフレットやモデルルーム、営業マンの説明で、その決断をしているのですが、たくさんの方がその決断に泣かされているということ、そのことに気付いて、実際に購入の際に気を付けていただければと感じる次第です。
パンフレットもモデルルームも、営業マンも、マンションを購入してもらうことが目的です。信じるべきは自分自身です。大事なことは、リスクがあることを充分に認識し、そのリスクを抑えるには、買う側のあなた自身が、知識武装することです。
新築マンションの設計図書
モデルルームとパンフレットだけ見ていてもデメリットに気付かない方がも多いのではないでしょうか。
そこで、ぜひ、一度は見て頂きたい資料があります。それは「設計図書」というものです。「せっけいとしょ」と読みます。
設計図書とは、構造に関する図面集、意匠(デザイン等)の図面集、設備に関する図面集などで構成されるもので、新築マンションを建設する上で欠かせないものです。
新築マンション選びをする方にとっては、売るためのツールより建設に欠かせないツールの方が大事だと言っても過言ではないでしょう。
但し、この設計図書を読み解くことは、一般の方には無理があるでしょう。なかには、この設計図書のなかの大事な情報をパンフレットや販売用図面集に転載し親切に説明して頂けるケースもありますが、まだまだかなり少数派です。
この設計図書からは、地盤、基礎工事、遮音性能、断熱性能、将来のリフォーム対応、使い勝手、日照(日影)のことなど、様々なことが読み取れます。
モデルルームやパンフレットには、PR材料はわかりやすく掲載されていますが、マイナス材料は読み取りにくいので、設計図書を確認してほしいと思います。一般の方には難解なので、専門家に同行して頂き、チェックするのも1つの方法ですね。
売買契約の注意点
購入する物件を決定すれば、申し込みをして売買契約という流れになります。
新築マンションの場合は、先着順で申し込みを受け付けることもあれば、期限までに申し込みした人たちで抽選を行うこともあります。そして、希望の住戸の購入が確定しましたら、売買契約となるわけです。
売買契約の前には必ず、重要事項説明というものを行います。その新築マンションの売買に関して重要なことを説明する大事な機会です。本来であれば、売買契約の締結日よりも前の日までに説明を受けておきたいものですが、売買契約の当日、契約の直前に説明を受けることが多いです。
しかし、当日に初めて説明を受けても一般の方に理解するのは難しい内容である上、重要事項の説明」という言葉通り、大事なことですので、契約日よりも前に「重要事項説明書」を売主よりもらっておき、その内容をしっかり読んでおきましょう。
不明な点は、契約よりも前にあらかじめ質問しておいた方がより良いでしょう。その際に、重要事項説明書だけではなく、一緒に売買契約書も頂いて事前に確認しておくことをお勧め致します。
内覧会と引渡し
新築マンションを契約し、そのマンションが完成すれば、引渡しと決済を行います。しかし、その前に大事なイベントが1つあります。それが、内覧会ですね。
内覧会とは、出来上がった建物を買主が確認し、契約通りのマンションか、施工精度に問題がないか、といったことをチェックする機会です。内覧会は、確認会などと呼ばれることもありますが、基本的には同じことですね。
新築マンションは青田買い(完成する前に購入する)ことが多いので、売買契約の時点では室内を見ることができません。つまり、内覧会は買主が初めて室内を見る機会ですので、多くの方が楽しみにしていますし、嬉しい場でもあるのですが、やはり、やるべきことはしっかりしておきたいものですね。
室内の施工が丁寧にされているのかどうかを確認したり、頼んでいたオプション工事がされているか確認したり、、、そのうえ、内覧会の際に各所の採寸を行う方も多いですので、実は当日はなかなか忙しいものです。
そこで、内覧会で行うべき施工精度のチェックを 専門家に依頼する方も多いです。専門家に依頼するのですが、できれば建築士の資格ぐらいは持っている方にお願いしましょう。
ただし、新築マンションの完成後にチェックできることは表面的な仕上げ部分がほとんどであり、専門家といえども、主要構造部分の検査までは無理です。
正確に言いますと、大きなコストをかけて非破壊検査で確認する方法もありますが、費用対効果や必要性はという意味で、そこまでする方はなかなかいないでしょう。
ただ、何もチェックしないと施工が粗いまま引渡しを受けることになってしまいますので、専門家に依頼までしないとしても、ご家族でしっかり確認しましょう。