建売住宅は危ないは本当か?

「建売住宅は危ない」というイメージをお持ちの方は少なくないようです。住宅業界に身を置いていますと、何度も住宅購入を検討されている方から、「建売は危ないから注文建築で家を建てるように親から言われた」「建売は危ないから買うなら、契約前に住宅診断しようと思う」などのお話です。

多くの方に「建売住宅 = 安物」というイメージがあり、それは同時に「安物=危ない」と連想しているようです。では、「建売住宅だから危ない」は本当でしょうか?

結論を先にいうと「建売だから」という理由で危ないわけではないということです。危ない物件は建売に関わらず注文建築でもあり、実際に何度もそういった現場を見てきました。つまり、建売でなくても危ない住宅はあるということです。よって全ての住宅に共通して注意しておいた方が良いと言えるでしょう。

また、この「危ない」が指すものにもよります。「建売は危ない」というときに、人によってイメージするものが異なるようです。ある人は、「工事の品質が低い」「欠陥住宅になりやすい」という意味で話しますが、またある人は「使っている材料・設備のレベルが低い」という意味で話していることがあります。

大きくわけて「施工品質が低い」という場合と「仕様レベルが低い」という場合があるわけです。このうち、「仕様レベルが低い」というのは建築コストの問題です。例えば、高級キッチンを使用すればそれだけ高くなるのは当然ですし、バスもトイレなどの他の設備もそうです。こういった水周り設備はなかなか高いですから、このグレードを上げれば高くなりますしグレードを下げれば安くもなります。

水周り設備に関わらず、フローリングやクロスもそうですね。そして、耐震性や断熱性といった性能に関わるグレードも同様です。こういった住宅性能をあげればそれだけ建築コストがあがりますから、建売住宅の売買価格もあがるわけです。これは当然のことですね。

たとえば、大手ハウスメーカーの建売住宅では、全体的に仕様レベルが高い(グレードが高い)ものも多いため、建売とはいってもなかなか高額な住宅になります。もちろん、中小工務店・不動産業者などでもこだわりをもって仕様レベルをあげていることもあります。

つまり、「仕様レベルが低い」という問題は価格との関係ですので、「建売だから危ない」とは少し話がずれているのです。ローコスト住宅、低価格住宅という言葉も耳にすることがありますが、これらの多くは仕様レベルが低いのは事実ですが。

一方で「工事の品質が低い」という点はどうでしょうか。実はこちらも価格と関係する部分が多いにあります。建築コストは資材等の仕入れ費以外にも人件費が多くの割合を占めます。人件費は現場で工事作業をする方の報酬・給与もそうですが、その現場を工事管理や工事監理をする方の給与等もそうです。工事管理とは主に工事の進捗・下請けや孫請け業者の手配などをしており、工事監理の方は設計図と現場が一致しているか施工品質に問題ないか等を担当します(会社によって役割分担が異なる)。

この人件費を抑えることは施工会社にとってはコストカットにつながり、それは建売住宅の売買代金にも影響してくるものです(注文建築でも同様です)。しかし、逆にこの人件費を削ることは管理や監理が不十分になってしまい、「工事の品質が低い」につながってしまう要因にもなっています。

「仕様レベルが低い」も「工事の品質が低い」もコストとの関係が非常に強いことがわかりますね。建売だから危ないというよりは、コストを削りすぎると危ないということが言えるわけです。

「そうなると高い住宅を買えば安心」だと考えがちですが、実はそうとも言えないのが問題を難しくしているところです。高い住宅を買えば、「仕様レベルが高い」ということは多くの場合に当てはまります。大手ハウスメーカーはそれにしても高すぎるということが業界人の一般的な認識だと思いますが。

また、工事の品質についても大手ハウスメーカーも監理は残念ながらまともにされているケースは少ないです。ローコスト住宅の場合は基本的にはされていないでしょう。監理に代わるものとして社内検査体制を設けていることが多いですが、大手ハウスメーカーではこれがある程度は機能していることがありますが、ローコスト住宅では機能していないことが多いです。

営業担当者などは「社内検査をしているので大丈夫」「第三者機関に見てもらうので大丈夫」などと説明しますが、実際には大丈夫でなかったケースが後を絶ちません。営業担当者がいう第三者機関はハウスメーカーや不動産業者の普段からの取引先(つまりその機関にすれば建築する側がお客様)ですから厳しい検査を求めるのは無理なことが多いです。

結局は「建売だから、、、」ということを気にせず、個々の物件ごとに自分自身でしっかり住宅を見て判断していくか、第三者の住宅購入サポートを受けるのが住宅購入で失敗しないコツです。

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