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一級建築士 真下裕之の住宅コラム

2つの「かんり(工事監理と工事管理)」と第三者検査


 工事の「かんり」には、設計者が自身の設計した建物の着工から竣工引渡しに至るまでを建築主の代理者としてマネージメントする「工事監理と、施工者が工事の品質、工程、安全、コストをマネージメントする「工事管理があります。

 現状では建売住宅と言われるもののほぼ100%が、また注文住宅と言われるものの多くが、施工者か売主の「設計施工」と言われる形態で施工されており、この2つの「かんり(監理と管理)」が曖昧なまま建設が行われています。

 建築主と建築家を仲介するシステムの中には、建築家に監理を求めず設計監理の中の監理費をコストから削る様なものも見られます。

 簡単に言うと、現在建てられている住宅のほとんどは、売主(または施工会社)の施工管理のみで建てられているということになります(書面上は工事監理者を記載していますが、その業務をほとんどしていません)。もちろん、施工管理のみでも施工者の技術や判断が適切なものであれば、良い住宅を建てることはできるでしょう。

 この設計施工体制の中で実施される品質管理を、一般の建築主や住宅購入者がチェックすることはほぼ不可能ですし、チェックすらさせてもらえないのが現実だと思われます。

 昨今はこの施工者に依る自社管理を外部へ委託し、これをもって第三者検査として宣伝している売主も見られます。この第三者検査と称する自社検査業務の外注化ほど、施工者が自らの責務を放棄した物はないと思います。

 法規的には建築確認制度と言われるものがあり、この建築確認申請に基づく完了検査をもって「公的な検査を受けています。」と言われることもありますが、この建築確認制度は建築主や住宅購入者に代わって品質を検査するものではなく、申請された建物の設計が法規に抵触しないことを確認する制度であり、完成検査も建物に法規に抵触する部分の無いことを確認するに過ぎません。

 昨今は、瑕疵保険制度が施行され保険を付与するための検査も実施されていますが、この検査も品質検査とは違います。あくまで保険を付与するための最低条件を満たしているかどうかの検査です。

 結論は、建築主や住宅購入者の財産や権利を守るための検査はほとんど行われていないということです。

 公的な制度による検査は、法規や保険制度に対する検査であり品質を保証するものではありませんし、施工者の社内検査ではその結果やその後の経過が建築主や購入者に示されるケースは稀なようです。

 住宅の第三者検査の依頼を多くいただく様になり、実際に多くの建物の検査をさせて頂いている者としては「建築主や購入者の財産・権利があまりにも蔑ろにされていた」というのが実感です。

 「、、、いた」と過去形で表現させていただきましたが、それは我々が第三者検査を実施させていただいた物件の多くでは、検査の内容や指摘事項の内容および我々の検査に対する考え方を施工担当者が理解いただき、検査に対する協力だけでなく、我々と一緒にお客様の立場で提案や修正を考えていただける様になってきたからです。

 検査にて不具合を指摘することよりも、次工程の検査に向けて注意点を共有し、手直しのないように施工者と我々が同じ方向に努力することが第三者検査の理想形であり、そこにお客様も参加していただければ永く住んでいただける住宅がお渡しできるものと思います。

真下裕之 真下裕之
一級建築士

住宅の設計・監理、ホームインスペクション(住宅検査・住宅診断)を行っており、埼玉・東京を中心に首都圏で活躍している。

住宅検査・住宅診断のアネスト
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