地質調査と地盤改良工事
荒井:
建売住宅を買うとき、地盤について心配している方のお話を伺うことが多いです。
石神:
現在は建築工事に当り最初に地質調査を行います。もちろん、建売住宅でもそうです。建設会社が地質調査会社に委託し、その調査会社が地質調査報告書を出すのですが、そこに地盤についての考察を記載し、地盤補強が必要な場合はその旨を記述します。建設会社が考察に沿った補強工事を施工する場合に、地盤保証をすることが一般的です。
設計者は調査会社の調査結果と考察を踏まえて地盤補強の工法を検討しますが、この考察をそのまま取り入れる場合が多く見られます。設計者によっては地盤補強が必要か否かの判断が微妙な物件に於いても、自分で検討しないで調査会社の判断をそのまま採用する設計が見られます。
荒井:
なかには、地質調査会社が補強を必要と判断しているケースでも、地盤補強をせずに「しっかり転圧すれば大丈夫」と判断している現場もあるようですが、これはやはり危険なことでしょうか?
石神:
調査結果を安全側に判断して「しっかり転圧して基礎を施工する」とするか、危険と判断して地盤補強を行うかは設計者が決めます。地質調査の結果から地盤の耐力を算定する方法は国土交通省の告示による計算式で基礎を設計しますが、試験結果で自沈層(地耐力が無い層)がある場合は告示に「建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない」と明記されています。
この難しい判断を調査結果だけではなく周辺の状況や地域の資料を踏まえて検討しないといけません。地盤補強を行わないと判断した設計者は責任がありますから、「しっかり転圧した地盤」の見極めを現場で行っておれば良いのですが、監督や業者任せになってる現状があります。
荒井:
建売住宅では設計者が名前だけで、こういった大事な判断に関わっていないことが根本的な問題ですね。実際にこういったことを設計者が真剣に検討している建売がどれだけあるのか、、、
地盤補強工事は補強内容によっては、コストが大きいものだと思いますが、だいたいどれぐらいの金額がかかるものでしょうか?
石神:
ざっくりとした金額は五十万〜七十万でしょうか。ただ、敷地面積や建物のプラン、地盤調査結果、補強方法などによるので、差が生じます。もっと大きな金額になるケースもあります。
荒井:
そうですね、かなり高くなる場合には200万円を超えるケースもありますよね。
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○インタビューに回答する専門家 石神 昭二 (一級建築士) 住宅コンサルティングのアネストで住宅検査・診断を担当 住宅の設計・監理の経験が豊富で、今は住宅購入の相談、第三者の住宅検査・住宅診断(ホームインスペクション)を行っている。建売住宅の購入サポート(診断・検査など) |
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○インタビュアー 荒井 康矩 住宅コンサルティングのアネストの代表者 不動産会社で住宅売買の仕事に従事した後、住宅コンサルティング会社を創業し、数多くの住宅購入相談を実施している。 |