建売住宅の耐震性
荒井:
話が変わりますが、耐震性を心配される方は多いですが、一般の方は耐震基準について誤解している方も多いですね。
石神:
現在の耐震基準は「震度○○まで耐える構造」という明確な基準で設計されておりません。予想される大地震が起きた時に人が避難するまで倒壊をしないという考え方で設計されております。従って大地震が発生すると建物はある程度の損傷があり、大きく傾く可能性はありますが、倒壊は免れる強度を持った構造であることを認識してください。
荒井:
よく新築の建売住宅を買う際に、図面で耐震性をチェックしてほしいというご要望があります。建築確認を受けている以上、法規準は満たしているということを説明しているのですが、法規準以上のことを求める場合は、長期優良住宅や性能評価制度を利用するのがわかりやすいのかと思いますが、いかがでしょうか?
石神:
長期優良住宅や品確法に耐震等級の区別があります。耐震等級1は建築基準法の規定による耐力壁と同等の量が設計されている場合を指します。耐震等級2は規定による耐力壁の1.25倍の量を指し、耐震等級3は1.50倍の量になります。耐力壁が増えると耐力は増しますが壁が多くなり過ぎて、使い勝手や居住性を損なう設計になる場合があります。
荒井:
耐震性は大きな地震が起こるたびに注目されていますし、実際に大事なものですが、使い勝手もあまり犠牲にしたくないでしょうから、悩ましいところですね。
石神:
また、東海地震が予想される静岡県は県の指針で地域係数という耐震基準が定められていて、地震力を1.2倍に割り増す設計が必須です。このように地震力を割り増しして耐震性能の向上を図る指針が決められている地域があります。
荒井:
また、図面上の耐震性を気にされている方が多いのですが、大事なのは図面だけでなく、その通りに建築されているか、また施工不良がないかも合わせて確認しないとせっかく耐震性を考慮したプランになっていても意義が大きく薄れてしまうこともありますね。
今の建売住宅は、建築中や工事前に販売していることが多いため実物を確認できないというデメリットもある反面、建築中に検査できることが大きなメリットだと思いますが、日々検査業務をしていてどう感じますか?
石神:
確かに、建売なのに建築中まで検査できるのはいいことです。注文建築でも、ハウスメーカーなどの場合、工事監理まで手が回らずに現場任せになっていることが多いですが、建売はもっと工事監理をしていません。全てとは言いませんが、ほとんどがそうです。そういう意味で、建築中を検査できる安心感は完成物件では及ばないですね。
でも、この仕事(第三者の住宅診断・検査業務)をしていて感じるのは、トラブルは建築現場だけではないということです。契約前に、「これを確認しておけば良かったのに・・・」ということがあまりに多いです。
建売は図面や仕様が細かくないだけに、契約前によくトラブルになる点だけでも確認しておいて欲しい、もっと早く相談してもらえればよかったと思うことが多いです。
荒井:
建売住宅を購入される方にとって、実務経験をもとにいろいろなお話を伺うことができました。ありがとうございました。
建売住宅の購入サポート(診断・検査など)
○インタビューに回答する専門家 石神 昭二 (一級建築士) 住宅コンサルティングのアネストで住宅検査・診断を担当 住宅の設計・監理の経験が豊富で、今は住宅購入の相談、第三者の住宅検査・住宅診断(ホームインスペクション)を行っている。建売住宅の購入サポート(診断・検査など) |
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○インタビュアー 荒井 康矩 住宅コンサルティングのアネストの代表者 不動産会社で住宅売買の仕事に従事した後、住宅コンサルティング会社を創業し、数多くの住宅購入相談を実施している。 |