床下で見るべきチェックポイント
荒井:
建売住宅を買う際に現場で確認すべきことを教えてください。
石神:
それはかなりたくさんありますよ。(笑)大事なことばかりですが、たとえば床下や屋根裏を確認せずに建売住宅を買うことは避けてほしいです。
床下点検口や天井点検口から内部のチェックをする際は、工事の残材やゴミが無い事を確認して下さい。これなら誰にとっても確認は難しくないですよね。これは工事中の現場管理が行き届いているか否かの判断材料の一つになるから大事です。清掃がしっかりできていない現場でよい現場はほとんどないのではないでしょうか。
床下点検口は、床下収納庫が点検口代わりになっていることが多いです。屋根裏点検口はクローゼットのなかにあることが多いですが、どこにあるかは図面で確認するか、売主に聞いてみるとよいでしょう。
荒井:
では、床下点検口から床下を確認するべき点はどういったものでしょうか?
石神:
床下点検口は設備配管が集中している箇所に多く設けられていることから、漏水の痕跡を見ることができます。新築だから漏水はないと思うのはいけません。多くの建売を見てきましたが、漏水している住宅も実際にあるのです。
荒井:
確かに、住宅診断の報告書を大量に見てきましたがいろいろありますね。漏水もありますが、ひどいものになりますと排水管が接続されずに床下に置いてあるだけということもありました。このまま居住し始めると床下がすぐに浸水して大変なことに、、、
石神:
そうですよね。床下が浸水してしまうとカビや木部の劣化にもなりますし、断熱材もダメになってしまうこともあります。
荒井:
購入前の住宅診断だけでなく、欠陥・不具合の調査もしていますが、建売住宅を買って居住してすぐに漏水が発覚して依頼をお受けしたケースが何度もあります。不幸なのは、床下点検口がない住宅で、2〜3年もの間、漏水に気づいていなかったときです。調査に窺ったときには、もう、すごいカビで、、、
荒井:
床下で他にチェックすべき点は何でしょうか?
石神:
現在はべた基礎が多く採用されているので、床下の床面は基礎コンクリートになっています。その表面のひび割れの有無についても充分留意して見て頂く事が大切です。
荒井:
床下のコンクリート表面にひび割れが見つかった場合は、危険だということでしょうか?
石神:
ひび割れの大半がヘアークラックと呼ばれる巾、深さ共に僅かなひび割れです。巾が約0.2mmで深さが2mm程度のものであれば、コンクリートの表面だけのひび割れですからコンクリート強度を損なう重大な割れではないことが多いです。
従って巾が0.5mmを越える程の広いひび割れは基礎強度に影響する重大なひび割れの可能性があります。5mmではなく、0.5mmです。
外部から見られる基礎のひび割れで、巾、深さ共に僅かな物は表面の仕上げに塗られたモルタル(セメントと砂と水を混ぜた物)に発生した割れで、基礎躯体が割れた物ではありません。そのモルタルの下にある基礎躯体にまでひび割れがあるかどうかを見極める必要があります。
仕上げモルタルは厚さが6mmから9mm程度ですので、深さが10mmを超える割れの場合は基礎の躯体からのひび割れと見られるでしょう。
荒井:
床下に潜って見ることで、基礎外部のひび割れのある箇所の床下側、つまり基礎の内側の状況も確認できますよね。ヘアークラックは別として、基礎の外部でひび割れがある場合は、床下も診ておいた方がいいですね。ほかに、床下で確認しておくことはありませんか?
石神:
床下の断熱材を見て頂きたいのですが床下を覗き込まないと見られませんから、ちょっと大変です。黄色または白色のグラスウールが床下地の間に落ちないように挟まっていますよ。
設備配管は給水管が青色系の被覆材、給湯管が赤色系の被覆材により施工されています。接続部まで被覆されている事が大事ですので、そこまで注意して見てください。
排水管は径が大きくて色がグレーです。重要なのは排水管がしっかり金物で固定されている状況を見て頂きたいです。これは排水勾配を維持する為の固定金物です。
荒井:
排水管の固定がしっかりされていないと、将来的に漏水の原因にもなりますね。断熱材に配管と床下は見るべき点が多いですね。ほかにも、土台や大引きをつなぐ金物も診ないといけませんし、大変です。
石神:
そうですね。正直なところ買主さんが自分自身で見るには無理があります。
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○インタビューに回答する専門家 石神 昭二 (一級建築士) 住宅コンサルティングのアネストで住宅検査・診断を担当 住宅の設計・監理の経験が豊富で、今は住宅購入の相談、第三者の住宅検査・住宅診断(ホームインスペクション)を行っている。建売住宅の購入サポート(診断・検査など) |
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○インタビュアー 荒井 康矩 住宅コンサルティングのアネストの代表者 不動産会社で住宅売買の仕事に従事した後、住宅コンサルティング会社を創業し、数多くの住宅購入相談を実施している。 |