マイホーム購入に頭金20%が必要と言われる理由・逆ザヤとは?
建物は年数の経過とともに価値が下がるのは言うまでもありません。特にマンションは一戸建てに比べて価格に占める建物の割合が高くなります。購入後に値下がりすることは避けられません。
最近、「景気が回復して来たから、これから値上がりする可能性があるだろう」と購入を検討される人がちらほらご相談に来られています。
例えば、1980年代後半のいわゆるバブル期では、確かに不動産価格が上がり続けました。これは土地価格が高騰したからです。現在は・・・というと、首都圏や近畿圏の特定地域では土地価格が上昇し始めています。とかく同じように捉えがちですが、あのバブル期は通常でなく「異常」であったこと、その後の痛みも経験した教訓を頭の片隅にしっかり置いておくべきだと思います。
ですから、マイホームは購入した直後から値下がりが始まっていると考えます。もちろん全く値上がりが期待できないわけではありませんが、交通や生活施設の充実で利便性が向上するなど、立地的な付加価値が高まって人気とならない限りは難しいでしょう。これを踏まえて、購入時に気を付けないといけないのが頭金の割合です。
販売業者は購入者の心理的な負担を少しでも軽くして成約に結び付けようします。よって、頭金を出来るだけ少なく抑えるプランを提案しがちです。頭金が少なければ少ないほど、購入時のハードルが低く感じられてしまうからです。
よって、手が届かないと思っていた物件でも、頭金が少なくても良いと背中を押され、半ば衝動的に購入されてしまうケースを見てきました。「夢のマイホーム。。まだ先のことだと思っていたけど、これなら買えるかも……」というわけです。
どこかで購入に踏み切ることも大切ですが、充分注意しておかなければいけないのは「頭金が低く抑えられる」と「購入しても良い目安」がイコールではないということです。
購入時点で物件の価値は購入金額より20%程度値下がりするのが一般的です。
つまり、20%以下の頭金で購入した場合、その時点で既に住宅ローンという借金の額が物件の時価を上回ってしまう「逆ザヤ」と言う現象が起こり得るのです。
たとえば、4,000万円のマンションを頭金10%の400万円で購入した場合を見ていきます。この場合の住宅ローン残高は3,600万円になります。物件価格が購入時点で20%下落しているものと考えると、物件の時価は3,200万円となります。よって、住宅ローン残高が400万円も上回っていることになります。
さらに時価は居住年数の経過で徐々に減少して行きます。そうなると普通に返済をしているだけではこの「逆ザヤ」は埋まるものではありません。
ところが、何らかの事情で転居を余儀なくされ、手放さなくてはならない事態になった場合、この「逆ザヤ」を補填して住宅を売却しないと行けないことを肝に銘じておく必要があるのです。
マイホーム資金計画の鉄則の1つとして、「頭金は20%以上を準備」と言われている理由をお分かり頂けましたでしょうか。