転勤になった家庭の住宅資金計画〜自宅を持ち続ける場合〜
一般的に「年間で3月は一番人が動く月」と言われます。この3月も数名の顧問客が人事異動(転勤命令)を受けて引越しをされました。予め想定をしていない限り、住居費を含めた生活設計の見直しを余儀なくされます。
その時点の住まいが賃貸であれば、人生に掛かる住居費で前提を覆すような状況にならないかもしれません。一方、持ち家であればタダごとでは済まされず、まず自宅をどうするかという決断を迫られます。
たとえば、「せっかく終の棲家と思って購入したのに・・・」と思っている方にとっては、将来戻ったときに再び居住したいと考えるのは自然な取り組みと言えます。
そこで転勤が決まったときの持ち家の取り扱いを整理してみたいと思います。
1.持ち家を賃貸に出さない場合
引き続き、持ち家の管理を自分で行うのか?それとも自分に代わって他人に管理してもらうのかを決めないといけません。後者の場合は親族や知人に依頼するか、専門の「空き屋管理サービス」を利用するのか?などの検討を行うことになります。
空き屋管理サービスでは定期的に巡回して清掃・通風・通水・郵便物処理などを行ってもらえます。料金は居住面積や1ヶ月あたりの管理回数などによって異なります。
2.持ち家を賃貸に出す場合
人が住むために通風・通水などは自然に行われて、さらに賃料が入ります。但し、賃貸前後にリフォームや清掃を行う必要があるためのコストが掛かります。さらに借り手への対応が必要になりますから、そのような管理面で以下のように選択が分かれます。
A)自分で借り手へ対応する
持ち家を管理してもらう人件コストは掛かりませんが、借り手を見つけること、借り手からのクレームや要望、賃料滞納時の催促、退去時の清算などをすべて自分で対応を行う必要があります。注意点はトラブルを避けるためにも借り手ときっちり契約書面を交わしておきましょう。
B)借り手への対応を委託する
借り手からのクレーム、滞納時の対応などを不動産管理業者を任せます。ただそこには一般的に月額賃料の5〜10%が相場の管理料が掛かります。また、借り手を見つけてもらう場合には手数料も掛かってきます。あと管理料がやや高め(8〜15%)になりますが、滞納や空室になった場合も滞りなく賃料補償するサービスを実施している業者もあります。
いずれにしても重要なことは賃貸に出す場合の期間を決めることだと思います。
賃貸する期間を限定できる「定期借家」と期間を定めない「普通借家」の2種類があります。転勤先から戻った後で確実に住みたければ「定期借家」として契約することになります。
一般的に定期借家は普通借家での賃料水準の70〜80%、しかも普通借家に比べてなかなか借り手が見つからないことが現実見受けられます。もしも人が動きやすい2〜3月を過ぎてしまうと借り手探しがさらに難しくなる傾向があります。
「普通借家」は上記のようなことが避けられたとしても、立ち退き料を持って交渉しない限り、借り手が退去するまで待つことになります。
転勤リスクがあるご家庭がマイホームを購入される場合に「いざとなったら貸せるから」と簡単に考えて進められる方をちらほら見かけます。
しかし実際には通常の維持コスト以外に諸々のリスク・コスト・手間が伴います。そのあたりの要素を折り込めるように余裕ある資金計画を立てて臨んでいただきたいと思います。